2017年12月23日 (土)

少女終末旅行第12話(最終話)

チト「おまえはまだ小さいだけで、人間の敵かもしれない。
敵。敵ってなんだ…」

ユーが喰われた!敵はヌコが巨大化したような、あの神像似の生物だ!
前回の感想記事で不吉なことなんか書くんじゃなかった!
あの石像の正体は、やはり、ヌコの成体でした。ヌコは小さな幼体だったのです。
成体の名はエリンギ。まんまですなw
中の人は、島本須美さんですよ!

記録映像によって、ようやく判明した世界の破滅の真実。
最上層部以外を踏破したエリンギによれば、この世界には、もうチトとユーリの二人しか人間は存在しない。
カナザワとイシイは消滅してしまったのか…。

喰われたのはユーではなく、身に着けていた機械装置でした。
エリンギたちは、古代文明の高エネルギー体を摂食しながら移動を続けている。
全てのエネルギーを喰いつくしたとき、都市の生命も終り、世界は静かな終焉を迎える。
そして、彼ら生命体も、運命を共にして滅びる。
なるほど、「少女終末旅行」は、壮大な終末SFだったんですね。

かくて世の終わり来たりぬ
地軸くずれるとどろきもなく ただひそやかに

ノーベル賞詩人T・S・エリオットの「うつろな男」より。
終末SFの名作「渚にて」(1957年)で引用されています。「少女終末旅行」の世界観にもピッタリと感じたので、引用してみました。

「でも、世界が終るなんてどうでもいいことだろ。あたしとユーがいれば、それでいい」
チトが宣言し、二人は、あらためて最上層を目指します。それは恐らく、絶望へ向かう旅に他なりません。
でも、二人はまだまだ諦めていない。
ユーリが明るく言い放ちます。
いちばんてっぺんに行ったら、月に行こう!」
絶望の果てに視えてくる希望。いいなあ。こういうの大好きです。

抑制の効いた美しい映像と、拮抗するかのような美しい劇伴音楽。
静謐な感動が滲んでいく…。
「少女終末旅行」は、強烈に存在を主張するような「名作」ではないかもしれませんが、すぐれた特異点アニメとして語り継がれる。そんな気がします。
年の終わりにふさわしい作品でした。
スタッフの皆さん、お疲れさま!そしてありがとう!

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2017年12月16日 (土)

少女終末旅行第11話

War and Human Civilization
「これは読めないな。旧い、遠い場所の文字だ」

ちーちゃんが発見した書物のタイトル「戦争と文明」をマクラ代りに、この世界の秘密が、機械兵器により滅ぼされた機械文明の終焉が暗示されました。

「すげえ。二十ミリ飲んだ」
ぬこの正体も気になります。食糧は弾薬や砲弾やガソリン。その似姿は神の像を思わせる。
ユーに懐いているぬこですが、その正体は神か魔か
「白くて、もちもちしてて、おいしそう♪」
呑気にヨダレ垂らしてるユーちゃんですが、下手すると、成長したぬこに食べられちゃうかもねw

ユーが何気に「ぽちっとな」したスイッチが、搭載した兵器を作動させた!
LANCHでミサイルが発射され、次にはビーム兵器が発動。
巨神兵なみの超弩級ビームが、廃墟の街を一気に薙ぎ払いました。そのまま、轟々と炎上し続けます。あたかも、旧約聖書において神の劫火に滅ぼされたソドムの街のように。
あまりの光景に、ユーは笑い出してしまいます。一種のパニック反応ですね。この辺り、描写がリアルです。

1945年7月、米国ニューメキシコ州における史上初の核実験、オッペンハイマー博士による原爆実験のエピソードを想起しました。
実験が成功し、猛烈な閃光と爆風、そして巨大なキノコ雲が立ち昇る。
そのとき、科学者たちの顔に浮かんでいたのは。
想像を遥かに超えた原爆の威力への畏怖。
そして、神のごとき巨大な力をまのあたりにした人間が見せる、恍惚とした表情だったといいます。

さて、ラジオから流れる音楽に導かれるようにして二人が訪れたのは、停泊した潜水艦。
内部で彼女たちが見出したものは、はたして何だったのか。
「ちーちゃん、音がするよ」
「ずっと動いてる。昔のまま?」
不穏な予感しかしませんね…。

余談ですが、アメリカ大統領が、「核のフットボール」と呼ばれるアタッシュケースを常時携帯していることは夙に知られています。
司令部を離れていても、核ミサイルの発射指令を、いつでも何処でも行うためのものです。
世界情勢がキナ臭い昨今、現在の大統領さんが、ユーちゃんみたいに「ぽちっとな」しないことを祈るばかりです。
ユーちゃんと同じくらい軽率な感じがするので(笑)。

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2017年12月 9日 (土)

少女終末旅行第10話

死人に武器なし

ユーちゃんの名言いただきました!
なるほど、そう考えればいいんですね。
ロマサガ1のプレイ時、「ねんがんのアイスソードを手に入れたぞ」な人を殺害してアイテムを奪うとき、いつも罪悪感に苛まれていたのですが、これでスッキリしました。ユーちゃんは救いの女神さまです。
そうか、死人に武器なしなのか…。

閑話休題。
Bパートで、世界が滅んだきっかけらしい戦争についての言及がありました。
「ここもずいぶん武器が落ちてるけど、ひどい戦いがあったのかな」
第1回の記事で、本作と東欧の紛争との関連可能性について述べました。
それは的を射ていないにしても、ちらつく「戦争の影」が気になります。
つまり、この世界に、二人にとっての「」が存在するのかどうかなのですが、その辺りは今のところ、故意にぼかされている印象です。

今回は、電車や時計など動く物体から力学的考察が、そのあと入手したラジオから電波や音波に関する物理的哲学的考察が、延々と披瀝されました。
考察といっても、二人の少女の素朴きわまる解釈を通じて理解しやすく咀嚼されているので、違和感はないのですが、あらためて「これって理科系アニメ作品なんだな」と認識させられます。

基本、無機的な世界観の本作ですが、ときおり挿入される抒情がまたいいんですよね。
特筆すべきは、チトとユーリが、沈みゆく夕陽を眺める場面でした。
「夕陽だね」
「何となく悲しい色に思えるのは、この音楽のせいか」
「きっと、夕陽の赤も哀しいリズムなんだよ」
「光のリズムか…」
歌や夕陽が、なぜ人に感動を与えるのか。普段は考えもしないことです。眼からウロコって奴ですね。
ともあれ、そっと涙を流す二人の姿に、じいんとさせられました。巧いと思います。

このまま、哲学と抒情とで静謐に了るのかと思ったら。
変な生き物あらわれた!
吾輩はぬこである。名前はまだない。
って云いたいところですが、そのまま「ぬこ」と命名されました。
自律機械の次は、奇妙な生命体の登場です。しかも、旅の道連れということで。

彼(彼女?)の今後の活躍(するのか?)に、期待したいと思いますw

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2017年12月 2日 (土)

少女終末旅行第9話

チトとユーリの前に出現したのはロボット!しかも喋っている!
人間たちとコミュニケーションできるよう、「共感」機能が備わっているとのこと。「われはロボット」的な自律機械なのですね。

生命や進化の根源にまで踏み込んだ、哲学的で、アクションに富み、お色気もたっぷりの、贅沢でステキなエピソードでした。静謐な劇伴も、見事に映像と調和していました。
廃墟美を描く映像と、大聖堂に響くような音楽との幸福な出逢い。
やはり「少女終末旅行」はすばらしい!

大胆にも、全裸で巨大水槽にとびこむユーリ。
やっぱりいい体してましたね!お胸にハリがあります。水着回どころか全裸回というサービスが嬉しい。
そして、ちーちゃんは下着wしかも重篤なカナヅチw
海、サカナ。溺れかけたちーちゃんの眼には、走馬灯が浮かんでおります。危うく一巻の終わりになるところでした。

「疲れたから、サカナ食べよーぜ」
「食べてはいけません」
ユーと自律機械との静かなる対決が微笑ましくて。
健全なる肉体には健全なる食欲が必要なのですねw
「このサカナを旅に連れていきたい」
「捕食者は友だちになれないだろ」
ユーちゃん涎がたれてますぞw

いつものように、静かなまま、お話が閉じるのかと思ったら。
建設機械がこの施設を解体し始めた
ユーリが叫びました。
「あのサカナをたすけようよ!」
ちーちゃんも肯きます。
「共感、ってやつかもね」
サカナを助けるためには建設機械を破壊しなければならない、二律背反?
ロボットという無機物を破壊するのも、「殺す」ことになるのか?
生命の定義次第ということで、回答は示されませんでした。
でも、破壊直前に建設機械と眼が合ったとき「ごめんな、でかいヤツ」って呟いたユーの台詞には、深い情感が籠っていました。

ラスト、黙々と修理する自律機械の孤影に、SF映画の名作「サイレント・ランニング」の結末映像を想起しました。
人間が存在しない宇宙船内で、唯一の生命である植物たちの維持管理を永遠に続けるロボットの映像を。

「人間なんて、もういないのに」
「関係ありません。ただ維持していくだけです」
われわれの日々の労働だって、創造というよりはむしろ「維持」です。
自律機械の行動を非人間的というのなら、私たちも同じなのかもしれませんね。

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2017年11月25日 (土)

少女終末旅行第8話

カナザワって、誰だっけ?」

忘却と記憶と
忘却するユーと、記録を続けるちーちゃんが、いつもながら好対照。
ユーの忘却が速すぎる気もしますが、よく考えたら時間経過が不明。
地図のカナザワと出逢ったのって、いつの出来事だったのでしょうか。時が止まったようなこの世界のなかで。

今回は、終末世界の考察と、アクションと、少女たちのひそやかな交情とが、バランスよく綺麗に調和していましたね。実に心地よいエピソードでした。
中でも特徴的なのは、アクションの扱い方。
迂回路をケッテンクラートで進みますが、重量に耐えかねて、足元から崩れていく。
大きく傾く車体を、あの体勢から立て直すユーがすごい。頭文字Dの藤原拓海くんよりドラテクは上と見た!(笑)
ジブリなら、宮崎駿演出なら、このスペクタクルをじっくりたっぷり描き込むところですが。
ミニマリズムなこの作品では、須臾のあいだに事件は終了してしまいます。「反ドラマ」ともいうべき演出が、不思議な効果を生んでいます。

初めてのお酒。
らせんを昇った上には建物が点在しており、二人は壜を発見します。
「これは何て書いてあるの?」
「ビウ、かな」
「すごい、金色の水だ」
「きらきらしてるねえ」
ここは、コップでビールだ!ユーちゃん分ってるねえ。
「まるで月光がとけこんでるみたい!」
「不思議な香りだ」
「苦いような、甘いような…うまい!」
二人でビールをごくごく。ビールが甘いなんて、ユーもちーちゃんもいけるクチですな。

月下で歌い踊る二人のデュエットが、たとえようもなく美しかった。静謐なこのアニメの、ひさしぶりの見せ場です。
踊り疲れて、そっと寄り添う二人の少女。
「ちょっとちーちゃん、髪の毛食べないでよ」
「うまい!」
少女のひそかな愉しみってヤツですね。隠微な感じがステキです。
すべては月の魔力がみせた、一場の夢幻劇だったのかもしれませんね。

愉悦の後には、相応の結果が。
「あたまいたい…」
二日酔いもお酒の醍醐味ということで、オチもつきました。

いやー分る分る。こんな愉しみでもなけりゃ、終末世界でやってらんないよね!
ということで、くそったれの終末世界に生きる私も、うまいビールを飲むとしましょう。冷蔵庫にビールの買い置きを切らしたことのない私ってえらい。
壜じゃなくて缶ビールだけど、プシュッとリングを開けるたのしみは格別です。
乾杯!つまみもあるぞ!サラミとチーズだ!歌え、踊れ、ユーちゃんの髪の毛たべたいぞ!

まだ朝の7時だけどなw

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2017年11月18日 (土)

少女終末旅行第7話

チト「何も食べなくても生きていけたらな」
ユーリ「そんなの生きてるとは云わないぜ」

何という生の哲学
ディルタイやベルグソンも刮目しそうな、ユーリの簡明かつ深遠なマニフェストです。
今回は、探して見つけて調理のみ。他には何の要素もありません。これで一篇を構成しちゃうんだからすごいです。
もはや、ミニマリズムの極北といえますな。

イシイが教えてくれた食糧生産施設に向かって、一路進む二人の少女。
工場内は暗く、迷路さながら。当然のように迷ってしまいます。
迷っちゃったよと嘆くチトに、ユーリは禅問答のような公理で返します。
「わたしたち、いつも迷ってるようなもんだし」
「いつもとは、ちがう」
「ああ、めちゃめちゃ迷ってる!」
めちゃめちゃいただきましたあ!

先ほどチトが捲き込まれかけた巨大機械は、食糧を粉みじんに砕くための粉砕マシーンでした。
「さっきの機械…」
「ちーちゃんも粉になるところだったね」
チト食糧ってかw
サラッと言い放つユーが怖ろしすぎてw
労働者が、事故でセメント樽に捲き込まれ、粉砕されてセメントの一部と化してしまうプロレタリア文学の名作、葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」のような先蹤もあるけれど、このエピソードもなかなかに総毛立たせてくれますね。

偶然から矢印の道しるべを発見し、無事に食糧生産施設に到着しました。
ナマの芋は一つしかなかったけれど、大量の粉が貯蔵されています。
芋の粉を焼く。砂糖は豊富。塩もある。
チトが、天啓のように思い出した!
芋はレーションの材料!
さっそく、巨大な窯でレーションを焼きます。出来上がりは香ばしく、美味しそうです。
「焼けてる!」
「おいしい…」

おじいさんの元を離れて以来、砂糖にも縁がなかった二人。
糖分は、脳の活動にも不可欠な栄養素。
大量に摂取した二人の脳内には、幸福物質が生成されたはず。
甘いって、幸せだよね
「そうだな」

人はパンのみにて生きるにあらず。
甘いレーションは、心の栄養です。

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2017年11月11日 (土)

少女終末旅行第6話

♪ふんふんふーん ぜつぼー ぜつぼー ぜつぼーは ぜつぼーで♪
ユーリが歌う呑気な絶望の歌がむしろ怖い
w

カナザワの次はイシイ。
地図に淫しているカナザワと、飛行機に淫しているイシイさん。眼鏡さんなのが共通です。
不思議なのですが、この終末世界で生き残っている人間の條件って、何なんでしょうか?
何かに一途に徹していると、意志の勁さで生存力が高まるのかな。
それともアレか。眼鏡が本体で、あとは人形ってやつか(笑)

絶望が静かにやってくる。
「もっと絶望と仲良くなろうよ」
「いいじゃん。もう、何処にも行かなくてもさ」
ユーリのこの台詞、脳天気さんの脳天気な発言にみえて、実は怖ろしい。
何処にも行かなくなったら、旅は終わりです。おそらく、チトとユーリの人生も。
「あきらめたら試合終了だよ?」って云ってくれる安西先生は、ここには居ないのですから。

孤独に飛行機制作を続けていたイシイは、二人に出逢ったことを喜びます。
「誰かが見ていれば、それが歴史になる」
裏を返せば、どんな偉業も、誰も見ていなければ偉業たり得ないということ。
「イシイは、人類最後の飛行者かもね」
チト、何気に不吉な預言をしております。
いよいよエンジン始動。
「さて、行くか。歴史の末端にきざむ飛行だ」

ところが。
成功かと思われた瞬間、飛行機の翼が折れて、墜落。
イシイはパラシュートで無事に脱出していました。
彼女は笑っていました。全てを賭けて全てを失った人の笑いです。
「あっけないもんだな。永いあいだ、一人で頑張ってきたのに。でもまあ、失敗してみれば、気楽なもんだな」

チト「笑ってる。なんで?」
ユーリ「分らないけど、仲良くなったのかも。絶望と」
チト「何それ」

本当に怖い「絶望」は、不幸のように突然やってくるものではなく、ゆっくりと近づいてきて、そっと寄り添ってくるものなのかもしれません。

死に至る病、それは絶望である」(ゼーレン・キルケゴール)
二人の終末旅行が、静かな絶望へと向かう「死に至る旅」にならないことを祈るばかりです。

イシイ(三石琴乃)三石さんの寡黙な演技が新鮮でした。いや、いつもは五月蝿いって意味じゃなくて(笑)

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2017年11月 4日 (土)

少女終末旅行第5話

結びの、雨音による素朴な音楽からEDに流れ込む演出が、あざやかに光っていました。
大好きなビートルズの名曲をふと想起して、何だか嬉しくなったり。

言葉が流れていく 紙コップに流れ込む終りのない雨のように(ビートルズ「アクロス・ザ・ユニバース」)
 
水の入ったコップを楽器として奏でる音楽があります。箱根のガラスの森美術館で実演を聴きました。
自然そのものから抽出したような音色は、心を豊かにしてくれるようでした。
今回のエピソードは、最少のものから最大の歓びを引き出す、チトとユーリの「生活術」が丁寧に描かれていましたね。

行間を読む
眼光紙背に徹する
そんな言葉があります。
前回、ミニマリズムと書きましたが、今回も簡潔きわまる構成の「少女終末旅行」を愉しむには、行間ならぬ「映像間」を読む視聴態度が必要なのかもしれません。

廃墟めいた何もない部屋に落ち着いた彼女たちは、ここにあってほしい物について語り合います。

二段ベッド
本棚
食糧棚
暖房とお風呂

二人は、そのまま眠ってしまいます。
「マッチ売りの少女」なら、幸福な夢をみたまま天に召されるところですが、チトとユーリは現実に引き戻されます。
夢から覚めてみると、現実が待っている。補給して移動して。これがあたしたちの生活。
夢想と現実とが、ここで的確に対比されています。

さすがに単調に陥る懸念を感じたのか、Bパートは映像表現で観せてきました。
ユーリの巨大化幻想から、巨大魚幻想へ。涎がすごい。滝のようです。
「だって、サカナだし。ちーちゃんだって、食べられるならあたしがいいでしょ?」
超現実的なチトの夢ですが、ユング風に夢を解読すると。
ユーリの潜在意識に、チトを「食べちゃいたい」願望がある?それは愛情表現の裏返し?

「あまりに愛しすぎると、今度はそれを毀したくなる。もう二度と失わないために」(ブラッドベリ「霧笛」)

何気ない日常表現のうちに「不穏」を匿している。それが少女終末旅行のひそかな魅力なのかもしれません。
心を静かにして観るべきアニメは久しぶりです。

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2017年10月28日 (土)

少女終末旅行第4話

静謐な作風の「少女終末旅行」。
しかし、今回のミニマリズムっぷりには、記事を書こうとする手が止まりました。
何しろ、描かれたことといえば。
いちばん明るかった建物寺院
カメラで映像記録
この二つのみ。
これで1話保たせるんだから、どうして凡手じゃありません。
ヤワな感想など峻拒する勢いです。純文学や芸術映画でも、ここまで切り詰めた作品は、なかなかないでしょう

「記録」がキーワードの本作。
記録魔のチトがカメラを入手し、映像を記録することができるようになって、撮りまくる。そんな彼女の姿が象徴的でした。
「やっぱりボケてる」
「だめだ。またボケてる」
ボケるという現象から、映像論的に何が読み取れる?
この現実の「揺らぎ」を表象した?
実は仮象の世界だから?この世界はやはり夢幻の空間?
いずれも正鵠は射ていなさそう。単に、チトの撮影技術がまだ稚拙だからだったのかもねw

「食べ物は減るのに、撮ったら残るなんて」とユーリ。
素朴きわまる感慨ですが、映像の意味論として、なかなか示唆的です。
エントロピー増大の法則により、全ての存在(熱量)は徐々に滅していくが、映像として保存することによって、「エントロピーの呪縛」に抵抗してみせる。それが映像の、「撮る」という行為の意味なのかもしれません。

カメラで撮影以外はひたすら食べるのが、二人の日常。
「チーズねえ。何なんだチーズ」
ぽつりと呟くチト。チョコも知らずチーズも知らない。本当に、文明の終焉から数百年が経ってしまったのか。

二人が辿りついた明るい建物は、寺院でした。
寺院とは、神様がいるところ。石像は神様。
いつもの如く、壁の文字を解読するチト。

400年前、三人の神を祀った
極楽浄土。寺院は、あの世を再現したもの。ちーちゃん似の巨大石像は、死後の世界を明るく照らす存在。
床まで光っている。蓮の花池。池の中には花と鯉の模造品が。ガラスの中に閉じ込めている。
あの世は暗闇。安心するために、神を造り、明るく照らすようにした。

大意、そんなことが記されていたようです。人の願望が、明るく照らす寺院と神像を造り上げたのですね。
しかし、人は消え去り、神様の像だけが残った。そんな皮肉。

巨大石像は、変顔のチトに似ていました。
「ちーちゃんが神さまなのでは?」
「神には食べ物を貢がなきゃいけない。くれよ」
「やだ」
即答して、もしゃもしゃ食糧を平らげてしまうユーリ。
「はっ、むしろ私が神なのでは?」
食べ物をとおして、「神性の認識」に至ったユーリ。
ユーリかく語りきってかw
なるほど哲学的。ニーチェもビックリです。

世界を探索し、再発見していく物語。それが「少女終末旅行」。
次回は、何を発見するのかな?

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2017年10月21日 (土)

少女終末旅行第3話

地図を失う」というちいさくておおきな絶望

3話目にして、二人の少女以外で初めて登場した人間、カナザワ。
地図を作製しながら、終わった世界を彷徨っている、もっさりした雰囲気のメガネさんです。

三人で協力し合い、昇降機で上層階に昇って、そのまま去ったカナザワ。
まさに一期一会。ただひとときの邂逅です。
カナザワの登場には、どういう意味が、役割があったのでしょうか。
私には、彼が「二人の身代わりとして絶望を体現した」存在と思えました。

「地図をなくしたら死んでしまう」とまで云っていたカナザワ。
その彼が、彫心鏤骨の思いで作成した地図を、すべて失くしてしまった。
絶望する彼に、ユーリは、さりげにフルーツ味のバーを差し出します。
「うまい…」
どれほど絶望しても、食べ物はおいしい。人の生って、そういうものなのかも。
二人の少女の前途に、ひとつの示唆を与えてくれた。そんな気がします。

上層階には、無数の街灯がともる都市風景が拡がっていました。彼方には、ひときわ明るい場所が。
二人の少女は、引かれるように進んでいきます。
まるで、明かりを目指して盲目的に飛んでいく虫のように。

カナザワは北へ去っていきました。
お礼だといって、写真機を二人に遺して。
「記録する」ことに執着するチト。写真機は、彼女にとって重要なアイテムになりそうです。

カナザワを当てたのは石田彰。しぶい演技が光っていました。

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