リトルバスターズ!第14話感想
#14「だからぼくは君に手をのばす」
「きみが望むまでもなく、ぼくらは孤独なんだ!」
Σ(゚Д゚;
理樹くんが、魂に響く詞(ことば)を叫んだ!
これは、吐胸を衝かれるイイ台詞でした。
「私たちは孤独ではない」「心は孤独な狩人」など、孤独文学を愛することにかけては人後に落ちない私が知る限りでも、理樹くんのはベスト級の台詞ですw
治療という名の忘却。
「西園美鳥」は、孤独だった西園さんが造り出した遊び相手、「妹」だったのですね。
鏡像が抜け出て現実化する発想は、エーヴェルス「プラーグの大学生」などの先蹤があるけれど。
リトバスのこのエピソード、直接には、萩尾望都「アロイス」辺りに着想を得たのかな?
自分にしか見えない妹の美鳥は、美魚さんにとって、たった一つの救いでした。
でも、親にも医者にも、「それは病気」だと、否定され続ける。
ついには、自ら否定してしまうことにより、美鳥が消えてしまった。
喩えようもない喪失感が、美魚さんを襲います。
「あたしが消えるべきだった」
ずっと、罪の意識で自分を苛んできた美魚さん。
この自己処罰願望は、「生まれて、すみません」の、あの作家を思わせます。
美魚さんのひそかな愛読書って、太宰治だったのかな?w
「西園さんを忘れない!」
必死で記憶を維持しようとする理樹くんに、美鳥が仕掛けた心理攻撃が巧みでした。
「美魚は、眼鏡をかけてたよ?」と云われれば、そうだった気がする。
嘘だよと云われると、そうなのかなという気がする。
まるでミステリの錯視トリックです。
もしかして、理樹くんに眼鏡っ子大好き願望があったとか?その深層心理の隙を衝かれたとか?
(ノ∀`)
理樹を鼓舞したのは、いつでも頼りになる恭介でした。
「おまえは、おまえを信じろ!」
勇気を得た理樹は、「終わる場所」から、美魚さんを救い出すことができました。
恭介は、やはり、リトバスという物語のカギを握る男です。
この結末で想い出したのは、オスカー・ワイルドの、影(魂)をテーマにした哀切な童話。
「漁夫とその魂」は、若い漁夫の体から、はじき出された影の物語です。
若者は、愛する人魚との恋を成就するため、影を捨てたのです。「魂のある人間は水の眷属とは愛し合えない」という掟ゆえでした。
影は、元の体に戻ることを願いながらも、人魚との恋に夢中な若者に拒否され、果たせません。
長い放浪の末に、漁夫が死ぬそのとき、ようやく元の体に戻れたのですが、そのまま一緒に波にのまれて死んでしまうという悲話でした。
ときに本体となり、ときに影となった美魚と美鳥。
漁夫とその魂は哀しい破滅しか迎えられなかったけれど、彼女たちは、お互いの存在を確かめ合うことによって、ようやく安息を得ることができたのですね。
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