2013年1月19日 (土)

サイコパス第13話感想

#13「深淵からの招待」

後がないよ!聖護くん
Σ(゚Д゚;
公安局長が、槙島を「しょうご」と呼び捨てに。
ギノさんと征陸さんが、父と息子であることが既に判明しています。
まさか、局長と槙島は、実の母と息子だとか?
('A`|||)
レッドヘリングの可能性が高いのですが、「裏の裏」という蓋然性も無視できないのが、この脚本さんのコワイところですw

「わたし、色相が濁りにくいのだけが取り柄なんです」
拷問にも等しいメモリースクープの洗礼を受けても、サイコパス数値はあっというまに平常値へ復帰。しれっと笑顔の朱ちゃんです。
打たれ強い?
それともまさか、三歩あるいたら忘れてしまうトリ頭
(ノ∀`)

レアケースである藤間や槙島は、200万人に一人の「免罪体質者」。
体質だから。そう云ってしまえば、話は終わりです。
瞠目すべき成功を収めた人を評するとき、「だって、あの人は天才だから」で切り捨てる紋切型とちっとも渝りません。
一方で、朱のサイコパス色相が濁らない理由が、征陸さんによって説明されていました。
現状をそのまま受容し、疑問を持たない。しかし、傀儡というわけではなく、正義のために生命を賭ける強靭な自律性もある。
征陸さんも、不本意だったドミネーターによる刑事活動に狎れてからは、犯罪係数が平準値に戻ったと謂います。
「色相が濁りにくい理由」は、この物語の最重要なポイントなので、腑に落ちる解明を、是非ともお願いしたいところです。

慎也も、読書家だったんですね。病床で、ごつそうなハードカヴァー本を繙いていました。
ジョセフ・コンラッド「闇の奥」
コッポラ監督の、狂気に充ちた戦場映画「地獄の黙示録」の原作としても、夙に知られています。
とはいえ、「闇の奥」と「サイコパス」は、内容に有機的な繋がりはなく、象徴の域を出ない感じです。エンドロールにはしっかり書名と出版社名が掲げられていたので、これも商業戦略の一環なのかな?w
「タイタス・アンドロニカス」の槙島といい、犯罪素質と愛書の連関性も気になるところです。

今さらですが、ドミネーターの中の人は、日高のり子さん。「タッチ」の浅倉南ちゃんです。
CMのネタにも起用されるほど、ドミネーターさんは大人気らしい。
「執行対象ではありません。トリガーをロックします
あの甘い声で囁かれたら、男たるもの、身悶えしてしまいますよ。
こんな夜に 発射できないなんて!』
忌野清志郎ばりに絶叫してしまいそうww

次回「甘い罠」

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2013年1月11日 (金)

サイコパス第12話感想

#12「Devil's crossroad」

弥生さんの異常な愛情。
あるいは、いかにして六合塚弥生さんは心配するのをやめて執行官になったか

…スタンリー・キューブリック監督の問題作「博士の異常な愛情」のパクリなのですが、判りにくかったっすね。スミマセンw

年末年始を挟んで折り返しの12話は、弥生さんに纏わる、過去回想でした。
槙島との直接対決という前半のヤマ場から一転して、地味な過去話とは…。
そうか!傷心の朱ちゃんが復帰するまでの時間稼ぎなんですね?わかりますw

弥生さんは、かつて、バンドのギタリストだったが、潜在的犯罪者と看做されて、施設に隔離された。
ロックを演ると、犯罪係数が上昇する?ロックのコンセプトが、基本的には反体制だからでしょうか?
反体制とは程遠い甘々なロックが氾濫する昨今、シビュラさんの判定も、時代錯誤な気がします。
パンクやデスメタルはダメだけどプログレはいいとか、シビュラさんなりの好みというか基準があるのかな?
(ノ∀`)

生前の佐々山さんが登場です。「野獣死すべし」っぽい、何でもアリの、ワイルドな執行官だったんですね。
彼が、のちに標本化され、衆人環視の眼に曝されることになるとは、神のみぞ知るということで。
「君には、執行官の適性がある」
若きエリート監視官、ギノさんの甘言にも屈しなかった弥生さんでしたが、捜査協力要請までは、さすがに断れませんでした。
ところが、潜入したクラブハウスで遭遇したのは、かつての仲間で、非公認バンドのヴォーカル、リナだった。
彼女は、弥生さんが更生施設に拘束されたのちも、ロックによる革命を夢見て、非合法に活動していたのです。
「シビュラ打倒!レジスタンス!あたしの音楽で世界を変えてやる!」
システムへの叛逆宣言は勇ましいのですが、やってる事は、ブツの売り捌きや、街頭スキャンの破壊工作という、いわば草の根運動。
反抗といっても、畢竟、校舎の窓を壊して廻った尾崎豊の歌どまりなので、「この(シビュラの)支配からの卒業」はまず不可能かとw

サブタイトルのDevil's crossroad(悪魔の十字路)は、ブルースの中興の祖にして、後世のロック音楽にも深甚な影響を与えた天才、ロバート・ジョンソンの「クロスロード伝説」由来のようです。
リナの主張する「音楽による革命」と、「真夜中の十字路で、悪魔と契約して超絶ギターテクを手に入れる」という伝説とを掛けたのでしょうね。

余談ですが、「ロックと反体制」で真っ先に想い出すのが、水野英子の名作「ファイヤー!」です。大好きな作品でした。
ロックは六苦」という、サンコミックスの帯のキャッチコピーが懐かしい。
ただ、今にして思えば、あのコピーって、暴走族の「夜露死苦」的なセンスだったということに気づいて、ちょっと苦笑している今日この頃なのですがw

今回のサイコパスは、ロックがそのまま反抗と自己主張の象徴だった世代への、しずかな鎮魂曲(レクイエム)だったのかもしれません。

次回「深淵からの招待」

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2012年12月21日 (金)

サイコパス第11話感想

#11「聖者の晩餐」

犯罪係数はゼロです
Σ(゚Д゚;

槙島が、船原ゆきちゃんの喉を掻き切るその瞬間、ドミネーターが「ゼロ判定」を下した!
惨酷の物語「サイコパス」において、私が最も慄然とした瞬間でした。

「ゼロ判定」。これは、顕かに異常事態です。
シビュラシステムが、人間の生体反応を基礎として犯罪係数をはじき出している以上、数値の逓減はあったとしても、ゼロはあり得ません。
あるとすれば、全知全能であるはずのシステムが「もはや数値化(計量化)が不可能」だと判定した以外には考えられないのです。
法律用語の常套句に「法の予想せざるところである」があります。法で裁き得ない特殊な事案について、しばしば(便宜的にも)援用されます。
犯罪係数ゼロという異常事態は、まさしく、「システムの予想せざるところ」だと謂えるでしょう。

システムでさえ捕捉不可能な、槙島の正体とは何か?
咄嗟に思いを廻らせると同時に、すごく嫌な想像が脳裡をよぎりました。
「親友が眼の前で惨殺されたこの瞬間、朱ちゃんの犯罪係数を測定したら、一体どんな数値が出るのだろう?」
('A`|||)

槙島は、決断できなかった朱に、「失望した」と告げました。
罰を與えるために、ゆきを殺害するのだ、とも。
今後も、狡噛慎也と槙島聖護を軸にした対決が、ドラマとしての扇の要になることは間違いないでしょう。
しかし、今回の挿話を経て、やはり槙島と朱こそが、「サイコパス」という恐怖の寓話の枢軸を為す存在だとの確信を強くしました。
二人は、二元論的対立における光と影、陽と陰、磁石の両極という気がしてならないのです。
だとすれば、失望したという槙島は、朱の真の姿を見誤ったのか?それとも?
それは、これから明かされていくのでしょう。

「魂の輝きが見たい」
不可解そのものだった槙島の行動原理が、やっと明確に吐露されました。
彼は、純粋なる意思の力により「選択する」ことが、最高の条理であり至上命題だと主張したいようです。
「決断できないのは、情念が饒か過ぎるか、悟性が不足しているかである」
槙島が引用するルネ・デカルトの箴言が、だからこそ生きてくるのですね。

「不決断こそ、最大の害悪」(「情念論」)
これも、デカルトの詞です。
ただし、不決断を弾劾する、現代的な「行動主義」を標榜したのではなく、良識や悟性の完成を阻害するものを「不決断」と定義したようです。
彼の、次のような名言と併せ読むと、理解しやすいと思います。
「プラトンやアリストテレスの議論をすべて読んだとしても、しっかりした判断を下し得なければ、決して哲学者たり得ない」
「秀でたる知性を有するだけでは十分ではない。大切なのは、それを上手く活用することである」
「最高の学問とは、世間という厖大な書物から学ぶことである」

デカルトは、こうも云っています。
「不完全な存在は、完全な存在へ向かって、自己を超える」
まだ不完全な朱ちゃんは、槙島という「触媒」を得て、自己を超えるのか?
恐るべき「完全体」へと生まれかわるのか?
そのとき、この「サイコパス」世界は、どうなってしまうのだろう?

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2012年12月15日 (土)

サイコパス第10話感想

#10「メトセラの遊戯」

もしかして、今回は虚淵脚本じゃないのかな?
「タイタス・アンドロニカス」や寺山修司といった衒学的な「擽り」はなく、ストレートな追跡劇の醍醐味が心地よかった。
事件は、現場で起きてるんだ!」
(ノ∀`)
まさに、気分は「踊る大捜査線」!本広監督らしい、刑事ドラマの粋でしたね。

朱の友人、船原ゆきを拉致して、監視官である朱を、贋のメールで引っ張り出した。
それは、執行官である狡噛を「狩場」に誘導するための手段だった。
「狩る側」を自認する泉宮寺が、狐狩りを開始したのです。
捲き込まれたのは、朱の友人、船原ゆき。かなりの巨乳さんです。
ヒロインの朱ちゃんが少年の体型なので、おっぱいさんは嬉しいです。
中の人、小岩井ことりさんも豊乳なのは、幸運な偶然というべきなのだろうかw

槙島は、すべてを静観します。
この狩も、極限状況に追い込むことにより、狡噛慎也という男の器量を測ろうという企図があります。
同時に、泉宮寺豊久という慢心した男が、同じ状況においてどんなリアクションを興すのかを、槙島は見定めようとしています。
そのため、ゲームバランスを均衡させるための、ヒントがちゃんと匿されています。
まず、ゆきを見捨てないことにより、通信トランスポンダーが手に入った。
だが、バッテリーとアンテナがない。
ドローン犬を斃すことにより、バッテリー入手。
さいごに、ゆきの下着がすり替えられている事実から、ブラジャーに潜ませたアンテナを発見。
「服を脱げ!」「下着もよこせ!」のやり取りが、何とも知れんおもしろかったですw
慎也はみごと合格。
でも、泉宮寺はどうかな?
自信家タイプほど、攻勢から劣勢に転じた時、往々にして鍍金が剥がれがちですからね。

なお、衒学的要素はないと書きましたが、サブタイの「メトセラ」は、サイボーグ化により肉体の不老不死を得た泉宮寺を指しているようです。
メトセラ。旧約聖書に顕れた、ノアの祖父にして、伝説的な長寿を誇った人物です。
ロバート・ハインライン「メトセラの子ら」の、驚異的な長寿一族、ハワード・ファミリーに引用されています。

朱ちゃんへのメールが「松原ゆき」だったのは、何か意味があるのかな?
「サイコパス」は緻密な作劇なので、些細な齟齬が、けっこう気になります。
単なる錯誤なのか、それとも…。

「自分の無能のせいで、人が一人死ぬのはどんな気分だ?」
朱ちゃんを、執拗に言葉で虐める宜野座。慎也から絶大な信頼を得ている朱ちゃんへの嫉妬ゆえでしょうか?w
そこへ、慎也から、通信が入った!宜野座の眼が、かっと見瞠かれた!
ありったけのドローンを到着させるんだ!」
ギノさん逆上!さすがの朱も呆れております。
愛する慎也のためなら、他の事件など何のその。ドローン総動員なんですね。
ギノさんの純情一途に思わず吹きましたw
( ´▽`)σ)´Д`)

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2012年12月 7日 (金)

サイコパス第9話感想

#9「楽園の果実」

朱ちゃんが、宜野座に反駁
子ども扱いされたのが、よほど悔しかったんですね。
新人とはいえ、彼女にも、エリート監視官としての自恃もあれば、部下である執行官たちへの手前もあります。
「階級上は、全くの同格ということを忘れないでください!」
思いっきり、やんちゃな発言で噛みついてみせました。
とはいえ、この業界、いくら職階が同列といっても、後輩が先輩に楯突いたら後が怖いのは当然の理。
でもだいじょうぶ!
何しろ、朱ちゃんは、適正オールAの逸材。色相が濁らない、驚異の潔白者。
そう、彼女こそは、「シビュラシステムに愛されし乙女」なのだから!
…そこが、不安でしょうがないのだけれど…。
('A`|||)

自称「狩る側」の泉宮寺は、帝都ネットワーク会長という要職にある、大企業家。
その富を活用して、自らを、脳以外全身サイボーグと化した。
老いに抵抗し、不老不死を得て、神にもなろうと豪語します。
肉体は魂の牢獄」(プラトン著「パイドン」より)まで引用しております。すっかり調子に乗ってますw
でも、槙島に自慢げに見せたのは、手ずから惨殺した、王陵璃華子の人骨で拵えたパイプ。
若い娘の体の一部を嗜好品化して喫うことにより、永遠の若さを得ていると嘯きます。
これでは、若さにしがみつく老残の醜さと、まるで異なるところがないのでは
実在の殺人鬼、屍体の皮膚その他のパーツを使い、ランプシェードなどの調度品を拵えて部屋に飾っていた変質者、エド・ゲインと、何ら渝るところがない卑しさです。
槙島の視線も、心なしか、冷ややかな気が…。

今回は引用控えめでしたが、「カリスマの三つの定義」は、とても興味深いものがありました。
英雄的・預言者的資質。倶にいることの心地よさ。雄弁な知性。
慎也曰く。槙島は、その全てを備えている。
槙島もまた、狡噛慎也の名を口に上らせるとき、嬉しさを匿せない。
天才は天才を知る。
やはり、槙島の好敵手は狡噛慎也
そして、泉宮寺よりも誰よりもコワイのは、実は、「サイコパス」の登場人物のうち、最大の未知数を秘めた朱ちゃんなのか?

その朱ちゃんを、初対面で見事にプロファイリングしてみせた雑賀教授。
彼こそは、怪物的カリスマである槙島に「知性」で対抗するべき参謀本部、シャーロック的存在なのかも知れません。

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2012年11月30日 (金)

サイコパス第8話感想

#8「あとは、沈黙。」

犯罪芸術にこそ、オリジナリティが必要

王陵璃華子の犯罪には、独創性が欠けていた。
それも仕方がありません。愛する父親と同化したい。そう渇望した結果なのだから。
憧れと模倣から出発し、劣化コピーで了るしかないのが、模倣者の宿命。
悪を体現するにも、才能が必要なんですね…。

彼女のサイコパス係数を、470超えにまで昂めたものは、何だったのか?
学園側の、徹底した「良妻賢母主義」に対する反抗心。
個性や情念を認めず、女性を規格化された工芸品のように扱う世間への異議申し立て。
狡噛慎也が「歪んだユーモアや攻撃的なメッセージ性の欠如」を批判していましたが、彼女にも、自己主張が欠けているわけではなかった。
しかし、あくまでも内向的・心情的なものであり、昇華して「世界を革命する」攻撃性には至らなかった。
ゆえに、彼女の悪魔芸術は、閉じられた唯美主義の範疇にとどまり、竟に発展することはなかった。
「不毛な耽美主義」。オスカー・ワイルドや、谷崎潤一郎の初期作品を謗るときに使われた詞です。
ワイルドと谷崎、両者に通底するのは、「ナルシシズム」と「女性崇拝」。
槙島には、そうした「女性的なるもの」が、つまらないもの、矮小なものに映じたのでしょう。
何よりも、璃華子の決定的な本質が「父への恋慕」だったことを見抜き、興醒めした様子が看て取れます。
隠顕する、男性原理至上主義
掴みどころのない槙島ですが、彼の行動原理は、実は、「オイディプス・コンプレックス」に支配されているのかもしれません。

その槙島ですが、慎也の洞察力、論理力、何よりも「犯罪への親和力」に眼をつけました。
悪魔メフィストフェレスが、全知を渇望するファウスト博士の魂を狙ったのにも似ています。
あるいは、「カラマーゾフの兄弟」において、誘惑者スメルジャコフが、兄弟随一の秀才であるイワンを狙ったように。
執行官は、潜在的サイコパスでもあります。
慎也の執行官としての才能は、一歩間違えば、犯罪者としても卓越している証左ですからね。
槙島と狡噛。過激な危険因子同士が結びついたとき、一体何が起こるのか…。
想像すると、肌に粟を生じさせます。
二人を止められるのは、もしかすると、シビュラシステムに愛された朱ちゃん

引用について。
「サイコパス」視聴の愉しみの一つは、豊饒な文学的引用です。
泉宮司に璃華子を狩らせつつ、弔辞のように槙島が呟いていた詩篇めいたものは、やはり「タイタス・アンドロニカス」でした。
はじめ「ソネット」か何かの引用かと聴いていたのですが「ゴートの女王タモラ」で、漸く判りました。
鋼鉄の罠で両脚をもがれた璃華子が、亡き父、王陵牢一の遺影を待ち受けにした携帯を、必死で操作しようとする。
父恋哀歌めいて、この場面は、とっても哀切でしたね。
その両腕を、無惨に切り落す。もう彼女は、表現すらできない。
二つの切り株で何をなせるのか」は、「タイタス」のラヴィニアが、強姦犯人について、紙に記すこともできないように両腕を切り落とされた残虐を、詩的に表現したものです。
既に、喋れないよう舌を切り落とされた挙句の狼藉です。
ラヴィニアは、唯一自由になる口に筆を咥え、犯人の名を紙に記して告発したのですが、璃華子は顔面を吹っ飛ばされ、絶命。

あとは、沈黙」か…。

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2012年11月23日 (金)

サイコパス第7話感想

#7「紫蘭の花言葉」

慎也「オレの顔に何かついてるのか」
朱「いや、別に…」
というか、朱ちゃん顔みてないし。剥き出しの下半身凝視してるしw

王陵璃華子の父親は、イラストレーター。
少女をモティーフに、解体された人体を、憑かれたように描き続けた。

少女人形を解体しオブジェ化して、アナグラムのように自在に綴り変えてみせた、エロスと妄執の芸術家、ハンス・ベルメール を想わせます。

璃華子の父親は、徹底したモラリストでした。
人間の暗黒面を描き出すことにより、人々に、内なる闇を意識させるようとした。啓蒙としての芸術を追究したのです。
しかし、シビュラシステムとサイコパス管理により、人々に強制的な平安が齎らされた。
自分の使命は終わったとして、画業を放擲する。システムに、全面的に恭順したのです。
ストレスを無効化するシステムにより、却って自律神経系が保てなくなり、生命力そのものを喪った。
竟には、廃人と化してしまい、心臓も停まって死亡。
芸術家としての父を畏敬していた璃華子には、システムへの隷属が、芸術の放棄という「敗北主義」が赦せない。
だから、チェ・グソンの使嗾をきっかけに、父の芸術を継承しようとした。
ところが、彼女自身の歪んだ嗜好が投影されて、父親のモラルとは懸隔した、恐るべき頽廃芸術=猟奇殺人が誕生してしまった。

「父が好きだった、キルケゴールの詞よ」
シーツにくるまれた、葦歌の全裸の死体に語りかける璃華子。
「人間は、動物と違って、精神的存在。だから、絶望することもできる」
絶望を知らなければ希望もない。「光と影」の二元論ですね。
ゼーレン・キルケゴール「死に至る病」(1849)は、絶望を「死に至る病」と規定し、主体的かつ実存的な克己を語っています。
父親の抱いた理想は崇高だったかもしれないが、娘の継いだのは、その異常性のみ。表現されたものは、ただの「絶望の拙劣な具現化」だったのです。
人の精神の在り方。生の意味。アタラキシア(魂の平穏)とは何か。芸術の使命。芸術と現実の相克。
槙島と謎の老人との対話も含めて、幾つもの問題を孕んだ、刺戟的な問題提起でした。

クラスメートの美佳に、行方不明の葦歌の事を相談する加賀美。
動くと却って危険。美佳は、不気味なほど冷静です。
「王陵璃華子に訊いてみたら?」
美佳も怪しい。巧みに、璃華子へと誘導します。
チェ・グソンのホログラム擬装が伏線で、美佳の正体は、あの槙島だとか?

すなおにお姉さまに確かめに行った加賀美は、スタンガンで失神させられる。
気がつくと、眼の前の水槽内には、特殊樹脂で標本化された、無惨な葦歌の体が!

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2012年11月16日 (金)

サイコパス第6話感想

#6「狂王子の帰還」

タイタス・アンドロニカスの語りを伴奏に齎される、残酷美の殺人。
マザー・グース殺人のミステリはあるけれど、シェイクスピア殺人とは…。
「絶園のテンペスト」といい、今期アニメでは、シェイクスピアが持て囃されているようです。

猟奇犯罪の陰に、槙島聖護あり。
今回は、高校教師として姿を顕しました。
潜在的殺人者を察知し、メフィストフェレスのように使嗾する。
彼の、究極の目的が気になります。

狡噛慎也が執行官に降格されたのは「標本事件」。
後輩だった篠山(ささやま)が、捜査中に惨殺された。
環境ホログラムに匿されるようにして、特殊樹脂で標本化されたバラバラ死体を、衆人環視のうちに曝される。
あまりの衝撃にキレた慎也の、サイコパス係数がぶっ飛んだ!

宜野座からの情報を基に、朱ちゃんは、執行官の秀星の部屋にまで押しかけて「標本事件」の真相を聴き出しました。
料理男子の秀星は、自称ワルい奴。朱ちゃんに、本物のワインを勧めます。
朱ちゃん酔わせてどうするの?
貞操の危機かと思わせて、先にツブれたのは秀星さん。ワルには程遠い醜態です。
朱ちゃんは、ほんのり桜色のまま、平然と飲み続ける酒豪だったのです。ボトルワインを手酌です。
白ワインを、ブランデーみたいに暖めて飲んでは不可ないのは、皆さんのご指摘のとおりです。
彼女が蟒蛇(うわばみ)だという事実が、はしなくも暴露されました。
海外なら、アルコール販売拒否されそうな童顔さんなのに…。
適性試験でオールAを叩き出した事実といい、朱ちゃんって、何処か特殊というか、人間離れしてますよね…。
特殊と謂えば、死体画像を眺めながら、ラーメンを食する弥生さんは、鋼鉄の神経。
彼女なら、血みどろ画像でミートソースも楽勝なんでしょうねw

私立桜霜学園は、女の園。
マリみてっぽい氛気を濃厚に漂わせる王陵璃華子さん。女王様の風格充分です。
シェイクスピアの悲劇がご贔屓で、おすすめは「マクベス」「タイタス・アンドロニカス」。
特に惨酷だから良いのだとか。
下級生の葦歌さんは、おねえさまに恋々の乙女。
美術室で、抱擁されつつ、甘美な詞をささやかれる。
美しいままで飾りたい。
そして、噴水のホログラムに匿すようにして、葦歌さんの、無惨にオブジェ化された死体が…。

標本事件にしろ王陵事件にしろ、死体損壊への妄執が感じられます。
グロテスクへの郷愁。江戸川乱歩の作品を想起しました。
死体を標本化して衆目に曝すのは、女の死体を屍蝋化させ、蝋人形に擬して白昼堂々と公開する「白昼夢」。
死体を分解してオブジェ化するのは「盲獣」。

乱歩には、そんな先例がありますね。
現実の事件で謂えば、酒鬼薔薇事件あたりがヒントになっているのかな?

桜霜学園の教育方針は、女生徒たちを温室に隔離するようにして、イノセントを保持しようという事勿れ主義。
しかし、閉鎖された空間には、往々にして奇形の種(しゅ)が育つものです。
王陵は、温室に咲いた「悪の花」なんですね。
それにしても、真正の快楽殺人者を捕捉できないシビュラシステムって…。

「これからも、もっともっと新しい画を仕上げていかなくてはならないんですもの」
槙島先生に向けて、不気味な微笑を泛べる王陵。
事件は、まだまだ畢らない?

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2012年11月 9日 (金)

サイコパス第5話感想

#5「誰も知らないあなたの顔」

狡噛慎也は、もと監視官
Σ(゚Д゚;

犯人の御堂は、タリスマンやスプーキーブーギーら、カリスマアバターを神と看做し、心酔する「模倣犯」でした。
個性がないのが個性。のっぺらぼうだから、どんな仮面でも被ることができた。
すべての黒幕である槙島聖護に踊らされ、底が割れると、即座に切り捨てられる。哀れな傀儡でした。

狡噛が、執行官らしからぬ精緻な帰納法を駆使して、犯人像に逼(せま)ります。
「警察」という言葉に着目し、現在のスプーキーブーギーを「成りすまし」と喝破。
アバターへのアクセスが頻回、しかも、ある時期を境にして、アクセスが途絶えた者。それが犯人。
アクセスが途絶えたのは、自らが成りすましたから。
条件に該当したのが、ただ一人、御堂だったのです。

ネット否定派の征陸を、絶滅危惧種と憫笑する朱とのやり取り。
「ネットは、良い悪いじゃない。そこにあるから使うもの」
教師のように整然と説明する朱ちゃん。
征陸が、とつぜん、ルソー「人間不平等起源論」に言及しました。
思わず検索しようとする朱を制します。すべて俺が記憶していると豪語です。このおっさん、やはり只者じゃないw
森の中の狩猟の喩えから、社会性の定義へ。通信などすべてのコミュニケーションは、社会性の獲得のためにある。
「ネットは、社会性の獲得になるのか?」
「なる…と思います」
ちょっと迷う朱ちゃん。

雑学では、槙島聖護も負けていません。
寺山修司「さらば、映画よ」を引用。エッセイかと思いきや、戯曲なんですね。
みんな誰かの代理人」。なるほど。
寺山の「青女論」において、代理人とは、自分の理想を仮託する存在(ヒーローとか、何処かに在るはずの素敵な人生とか)。代理人と自己との境界線を見失った者は、すなわち、精神的な「怠け者」である。
「どこまでを代理人に任せ、どこからを自分に奪還すべきなのか」
それを決めるのが「情熱」だと、寺山は論じています。

映像としては、ホロコスの内装クラッキング場面がおもしろかった。
ヴァーチャル映像がぐにゃぐにゃ崩れて、眩暈を誘うような壊れた空間を、逃げていく犯人。
征陸が、火吹き男よろしく火焔を吹きつけ、スプリンクラーを作動させて、クラッキングを強制解除するアイデアも冴えていました。

冷徹と見えた宜野座が、朱に、機密の人事データを提供します。
らしくないですね、朱ちゃんに惚れてるのか?w
「狡噛慎也。もと、監視官」
捜査中に犯罪係数が急激に増加。制止を振り切り捜査続行したため、執行官に降格された。
朱にとって、慎也はいよいよ気になる大きな存在に!

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2012年11月 2日 (金)

サイコパス第4話感想

#4「誰も知らないあなたの仮面」

誰も知らないあなたの仮面(ペルソナ)。
これは反語なのでしょうか?

アバターは確かに仮面ですが、仮想空間(コミュ)でビッグネームになるほど、匿名性が稀薄になってきます。
あげく、リアルでの本人が殺害されて、アバターを乗っ取られるという事件が連続発生。
この犯行にどんな意味が含まれているのかは、現段階では不明。
でも、現実における存在の薄さと、仮想空間における存在の濃さが、陰翳深く対比されている事は看取できます。
これも、虚淵さん流のアイロニーなのかも。

サイバー系の作品といえば「攻殻機動隊」。映画なら「マトリックス」が著名です。
しかし私世代では、ギブスンの里程標的SF作品「ニューロマンサー」(1984)が想い出されます。
サイバースペース・カウボーイたちの活躍を描くこの作品は、上記の後発作品に深甚な影響を与えたと倶に、ジャポニズムが濃厚に反映されています。
電脳都市チバ・シティとか懐かしい…。

サイバー空間における「成りすまし」。
輓近の、遠隔操作冤罪事件を髣髴させます。
俺を踏み台にしたあ!」(黒い三連星)は、もはやギャグどころでなく、苛烈な現実なのですねw
サイコパスやシビュラシステムが孕む問題を剔抉しまくった第3話迄から、少しポイントをずらしてきました。
事件は、新たなフェイズに移行した感があります。

オフ会を開催させて、犯人をおびき出すが、気づかれて逃亡された。
さらに、スプーキーも惨殺されて、アバターを強奪されてしまいました。
裏で糸を引いているのは、慎也と深い因縁のありそうな、槙島聖護?
彼がすべての黒幕なのか?

朱は、アバターでも有名人。
コミュのホスト、スプーキー・ブーギーが、彼女をそう評しました。
スプーキーの現実の名は菅原昭子。朱の同期だというからには、確かな情報なのでしょう。

慎也の「正義」に染まれば、朱のサイコパス数値は大きく揺らぐ。
征陸は、そう喝破しました。
朱が、システムに対して驚異的な適性を示した秘密も、那辺に在りそうな予感がひしひしと。
彼女がイノセントだから、というわけでは、決してなさそうです

正義の執行官が「狡噛」。悪の化身が「聖護」。
この辺のセンスにも、虚淵流の皮肉が効いています。

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