氷菓第22話(最終話)感想
#22「遠まわりする雛」
遠まわりする二人。
謎そのものは、今回も簡明なものでした。「通行止」の標識を利用するのは、ミステリにおいて頻回に使われる手法。
描かれたのは、むしろ、二人の関係です。
前回の、里志と麻耶香の関係は?を受けて、奉太郎とえるの関係は?で収めた構成が、迚も綺麗でした。
アニメの構成は、原作順でいえば、短篇集「遠まわりする雛」の劈頭から始まり、「クドリャフカの順番」まで到達して、再び「遠まわり」に還ってくる。
いわば永劫回帰。この美しい円環には、心地よいものがあります。
「氷菓」の掉尾を飾るのは、地方のビッグイベント「生き雛祭」。
えるちゃんからの電話で、奉太郎は雛の傘持ちを頼まれます。
結婚式で謂えば、ブライダルロードを随伴する父親の役回り?ちょっと違うかw
お内裏さまは、紅をさした入須先輩です。この人、宝塚の男役でもイケますね。奉太郎とは渝らず微妙な関係ですが、賢姉の供恵さんにタイプが似ているからかな?
橋は通行止。
狂い咲きの桜の樹の下を、生き雛のえるちゃんが通るフォトジェニックな映像を撮りたいという、地元のぼんぼんの気まぐれが発端だったようですね。
桜は、古来、象徴的な花で、その蠱惑を表現化した短篇「桜の森の満開の下」や「桜の樹の下には」といった名品があります。
満開の桜の下で、人は気が狂う。小成のぼんの気まぐれも、佯狂ゆえだったのかもしれません。それは穿ち過ぎかw
えるちゃんは、東京の大学に進学し、いずれは地元に戻って、農業経営を継ぐ意思があるようです。
理系といえば、農学でしょうね。もやしもんとか銀の匙とか、ああいう感じです。
古典部の事件を通じて、経営戦略が決定的に欠けていることを自覚した。
だから、画期的な農産物の開発など、理系イノベーションによって、千反田家の経営を維持しようというのです。
卒業、即、農業経営の後継者。
ごくつぶしの異名として「旗本の三男坊」という詞がありますが、地方の名家の長女というのは大変なんだなあ。
そんな使命感が、えるちゃんの可愛いおつむを、いつも悩ませていたのですね。
経営戦略眼というなら、奉太郎が修めればいい?
何という婦唱夫随。偕老同穴w
彼の思いは詞にならなかったようですが、えるちゃんへの秘めた想いは、ひしひしと形を成してきたようです。
開始当初は、フラットな物語を、時に奇矯とも見える映像表現でリカバリーしていた印象があった「氷菓」。
しかし、「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」と、謎の質と人間観察とが深化していくに随い、どんどん作品世界に引き込まれ、考察もさせていただいたのは、いい想い出です。
「氷菓」は、まちがいなく、京アニの里程標作品の一つになったと思います。
スタッフの皆さん、お疲れさま!
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