2012年12月27日 (木)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第12話(最終話)感想

#12「恥の世紀」

少年兵にして、武器を憎む。
そんな矛盾を孕んだヨナは、ココにとって、いわば「人間たちの代表」。
その彼に託されたのは、人間たちにココが與えた、2年間の執行猶予だったのです。
猶予期間中、キャスパーに随って世界をめぐり、あらゆる紛争や戦争をまのあたりにしてきた。
「2年間考えて、答えは出たか、ヨナ?私と世界、頭がイカレてるのはどっちだ?」
ココの過激なやり方も、戦争を止められないこの世界も、どっちもイカレている。
70万人なんて、あっという間に死んだでしょ?」
ヨルムンガンド計画が発動すれば、確実に70万人が死ぬ。
かといって、放任しても、人は戦争でばたばたと死んでいく。
そんな苛烈な現実を前に、ヨナは降伏し、ココの説く「平和」を受け容れた。
「ココ=ヘクマティアルと新しい世界を旅する」みちを選んだのです。

「若き野心家の行きつく先は、夭折か変節」
前回、そう書きました。
しかし、彼女は破滅することなく、悠々と生き延びました。腹心の仲間たちと倶に。
ヨナの決心をスプリングボードにして、ヨルムンガンド計画を発揚。
計画が完遂するかどうかは、人類が恥を知るかどうかにかかっている。
つまり、自分はきっかけを造ってやったに過ぎない。恒久平和が訪れるかどうかは、人類しだい。
武器商人らしい、巧妙なやり方ですねw

「ヨルムンガンド」は、掉尾に至っても、思想を固定せず、価値観の同時並置を貫きました。
いわば、現実を加工せず、読者(視聴者)に裸のまま示してみせたのです。
ココと対立する立場のキャスパーは、意地悪く問いかけます。
「武器を失くすことができるかな?」
本然の武器商人を標榜する彼は、空を封鎖しても、海も陸もある、と嘯きます。
そして自らは、いざとなれば「棍棒でも売る」と言ってのけました。
人間から闘争本能が消滅しない限り、人間は、武器を取り上げられても戦う。拳ででも殺し合う。
ココは、キャスパーに明確な回答を與えず、ただ、ヨルムンガンド計画の実行を以て、返辞としました。
「貴方と私と、どちらかが正しい道を往く。そして正しいのは私という、絶大な自恃のあらわれなのでしょう。

このパターンの物語に接するつど想い出すのが、故・石森章太郎のSF傑作「大侵略」(1970)です。
ある老科学者が「逆爆発装置」を開発し、アメリカを初めとする核保有国に、無条件降伏を迫ります。
応じなければ、アメリカが国内に保有する核を、遠隔操作により爆発させる、というのです。
狂人の戯言と一笑に付したホワイトハウス首脳の眼の前で、じっさいに核を爆発させてみせ、アメリカを、世界中を震撼させます。
結論をいうと、老人の真意は、まったく違うところにあったのです。
CIAのエージェントとなっていた、老人の孫息子ケンが、老人を、世界征服を企図するマッドサイエンティストと誤認して射殺してしまうのですが。
老人の、最期のことば。
「やったぞ、ケン!わしは、世界中の核を無力化することに成功した!」
逆爆発装置の完成形とは、すべての核を遠隔操作で無力化することにより、世界に平和をもたらすことだったのです。
しかし、核の無力化も、老科学者の幻想に過ぎなかったのかもしれない。
結末をぷつりと切る「曖昧法」により、「ヨルムンガンド」の結末を髣髴させます。

「大侵略」は、ラストに引用された次のエピソードによっても、忘れがたい印象を遺しています。
ニューヨークのブロンクス動物園の類人猿舎には、かつて「鏡の間」という名の檻が存在しました。
そこに立つと、鉄柵越しに、自分の姿が鏡に映るのです。思わずみつめると、説明書きが眼に飛び込んできます。
世界で最も危険な動物」。
当時の園長で、動物保護の泰斗であるコンウェイ博士曰く。
「人間は、他の動物を絶滅に追いやった、唯一の動物だ」。
これも、ヨルムンガンド世界にそのまま響いてくるような、痛烈な皮肉ですね。

「ヨルムンガンド、発動!」
…さて、「新しい世界」は、訪れたのか?
いずれにせよ、人類の存亡を賭けた「乾坤一擲」は為されました。
全ての結末は、読者(視聴者)の想像力に委ねられたのです。

ココ組が無敵過ぎるとか、弾丸回避率はブララグを凌ぐとか、東映版「Kanon」以上にアゴキャラ過ぎるとか(笑)、とかくの揶揄もあったようですが。
ピカレスクロマンの佳作として、あの傑作「ブラック・ラグーン」以来の喝を癒してくれました。
スタッフの皆さん、お疲れさまでした!

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2012年12月20日 (木)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第11話感想

#11「ウォーモンガー」

「ヨナの『世界が好き』は、お世辞と希望でしょう?皆がちょっとずつ優しくなれば、世界が輝き出す。でも、そんな日は来ない」
「あなたは、本当の私と似た者同士。新しい世界を、私と生きていこう!」
歌舞伎では、女方(おんながた)が切々と心情を訴える台詞を「くどき」と謂います。
これは、ココの、ヨナに対する「口説き」ですね。
本当の私と同じ」か。まさに、殺し文句だ…。

ココがたびたび口にする、70万人の犠牲。
恒久平和の前提条件である、制空権と制海権を支配するために必要な最小限度の犠牲、という意味ですね。
実は、これは詭弁に属します。この論理を用いたがるのは、独裁者の特徴です。
「第一次大戦では6600万人、第二次大戦では8000万人、第三次大戦では、さて、どれだけ死ぬでしょうか?」
戦火を、山火事に喩える例があります。どちらも、いったん始まったら、止める手段がない。全てを焼き尽くすまで収まらないからです。
70万人の犠牲を是認するなら、80万人でもいいのではないか。場合によっては(相手が抵抗するのなら)、100万人でも、200万人でも。その犠牲が、恒久平和のために必要ならば。
そういうことなのです。
目的のために手段を択ばないのなら、どんな理屈をつけようとも、それはもはや「戦争それ自体」。「犠牲の幾何級数的拡大が不可避」という意味で、戦争と何ら渝りません。
ですから、普段から「平和」を標榜する人間がこれを唱えたなら、顕かな偽善でしょう。
しかし、ココは武器商人。戦争を起こす側の人間。
しかも、彼女は「世界が大嫌い」。
「世界が嫌いな私が、世界を破壊するより修繕するみちを選んだ。感謝しなさい」
悪党も、多様化の時代。
悪党が、世界平和を齎そうとする。この逆説が意味する、深さ、重さ。
ここに至って、武器商人という設定が生きてくるのですね。

ヨナを喪ったココが、泰然としているのは、訣別だと思っていないからでしょう。
彼は、明確に反論したのでなく、結論が出せずに逃げた。
いずれ必ず戻ってくる、という確信まではないのでしょうけれど。

ココを離れ、キャスパーの傘下に加わったヨナの旅は、結論を見出すための旅となったはず。
次回はもう最終話。
一期はコンティニューでしたが、原作が完結しているので、二期の最終話は、真の最終回になるでしょう。
原作未読なので、刮目して待ちたいと思います。
人類の歴史において、若き野心家の行きつく先は、夭折か変節というパターンが多いのですが…。
ヨナの見出した結論とは?
長い旅路の果てには、何が待っていたのか?

次回(最終話)「恥の世紀」

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2012年11月28日 (水)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第8話感想

#8「NEW WORLD phase.1」

新世界より
(ノ∀`)

「NEW WORLD」。
ココとドクター・マイアミ(天田博士)の遠大な計画が、具現化した世界が「新世界」。
その計画名こそが「ヨルムンガンド」でした。

北欧神話のヨルムンガンド(ミドガルズオルム)は、海中に在って、地上(ミドガルズ)をぐるりと囲繞するほど巨大な蛇で、己の頭で己の尾を咥えている。象徴的な構図です。
兄のキャスパーどころか、腹心でお気に入りのヨナくんにすら、計画の全貌は明かされていません。
ヨナのモノローグが、流れます。
「今思えば、僕はココを、何一つ理解できていなかった」

キャスパーが全世界に向けて発表したのは、ヘクマティアル・グローバル・グリッド。
ヘクマティアル一族が営々孜々と構築した海上輸送網と、打ち上げた126機の人工衛星から成る、総合兵站・指揮通信システム。
このパッケージを活用すれば、どの国も、何処でも戦争が可能になります。いわば、「戦争の民間委託」です。
まさに、武器商人の夢の実現ですね。
しかし、ココが見据えているのは、兄の思惑を超えて、その遥か先でした。

彼女はかつて、ヨナの問いに、武器商人を続けている理由を簡明に説明しました。
「世界平和のため」。
なるほど。武器商人が世界中の兵站や通信を牛耳ってしまえば、これまでのような、利害や対立が昂じた結果の「偶発的」な戦争は起こりようがありません。
そこに現前するのは、不確定性を排除したスタティック(静的)な世界。
需要と供給の完璧なコントロールを可能にすることにより、まさに「戦争市場における均衡理論」が成立するわけです。

「ヨルムンガンド」も、竟に、終章を迎えました。
思えば、強烈な個性が、泡沫のように現れては消えました。「平家物語」じゃないけど「盛者必衰の理」ですね。
生き残ったのは、カリー社長とアマーリア・トロホブスキー。
元女優で才色兼備、カリスマ性のあるアマーリアは分るのですが、第1話からしぶとく生存しているカリー社長がちょっと不思議。
小火器専門の武器商人。いつ、ココに始末されてもおかしくないキャラでしたが、何故か生き延びました。
中堅どころでは商売が立ち行かないという現実認識も持っています。大手チェーンと商店の関係に似ていますw
危機感から、レストラン業への転回も視野に入れているようです。
最終話では、殺し屋のドミニクたちを雇用したレストランチェーンの開店場面が見られるかもしれません。
「でもしか」商法では、某ワタミの社長辺りが激怒しそうだけれどw

ヨナ「僕は武器商人と旅をした
この過去形が包含する意味は?
字義どおり、「武器商人であるココ」の消滅
ヨナとココは、ついに相容れない存在だった?
それでは寂しすぎる。
私としては、過去形の理由は「ココが武器商人から進化した何物かに遷移した」と解釈したいィ…。

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2012年11月22日 (木)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第7話感想

#7「Pazuzu」

仕事が立て込んで、ここ数日、帰宅が深夜に亙ったため、簡易感想です。

爆弾の専門家、ワイリのエピソードを以て、ココ組の過去回想は周回しました。
キレ者だらけのココ組にあって、ヨナに講学するとか、比較的まともで知的な人かと思っていたら。
マジキチでしたw
人間爆弾の爆弾返しとか、爆弾を使わせたら世界一。
銃もコワイが、爆弾はもっと怖い。殺傷力がハンパありません。
無敵少年兵のヨナくんさえもが、一目置きます。
ワイリ「もう、授業を受けてもらえないかも」
ヨナ「ワイリの授業だけは受けないと」
お互いの、負のリスペクトっぷりに吹いたw

二期に入って続いていたエピソード回が畢り、次回からは、いよいよ本領発揮の新たな展開が。

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2012年11月14日 (水)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第6話感想

#6「嘘の城 phase.2」

嘘の城」か…。

日野木は、手塩にかけて育てたSR班を、自ら切り捨てたのですね。
部下は全滅。日野木はバハマに逃亡し、現地の女性と家庭を持って、可愛い娘まで儲けている。
敗者には何もやるな。非情さで生き延びた日野木です。
しかし、そこまでして、得た物は?
いっけん幸福そうな家族でさえも、「嘘の城」に視えてしまうのは…。

スペインの城」といえば、砂上楼閣のことです。
「嘘の城」というサブタイにも、何かしらの意味が込められているとは予想していましたが、なかなか酷薄な真相でしたね。
日野木が嘯いているとおり、幽霊であることに倦み果て、表舞台での行動を仰望したSR班隊員たちにとって、これは死に場所、花道だったのかもしれません。

こうしたどんでん返しは、スパイ小説(エスピオナージュ)において、頻回に使われる手法です。
エリック・アンブラー「あるスパイへの墓碑銘」(1938)は、荒唐無稽な諜報スリラーだったスパイ小説に、リアリズムを持ち込むことに成功しました。
ジョン・ル・カレの「寒い国から帰ってきたスパイ」(1963)は、東西冷戦を背景に、組織と個人の相克や人間性の尊厳の問題を鋭く剔抉した傑作です。
ル・カレは、あのMI6に所属経験があり、その写実描写には、自身の経験が生かされています。

SR班に手向けられた日野木隊長の台詞は、まさに「あるスパイたちへの墓碑銘」だと謂えます。
しかも、SR班暴走の引き鉄になったのは、辞職願を叩きつけ、そのままキャスパー組として陽のあたる場所に出たトージョだったという皮肉。

トージョは生き残った。
大義のために散るのが戦士の本懐なら、スパイの本懐は、泥にまみれてでも、とにかく生き残る事。
生き残った日野木は、生き残ったトージョを後継者認定。密偵のすべてを教えると、一方的な師弟宣言です。
穏やかじゃないのは、ココちゃん。
アールに逝かれ、今またトージョに去られようものなら、ココ組解体の危機。
「トージョは、5年後もあたしの元で働くんですう!」
ココの酔拳に、トージョ、ちょっと嬉しそう?
美女二人(ただしキケンw)に仕える男子の本懐は、凡人の知りうるところではありませんw

次回「azuzu」

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2012年11月 7日 (水)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第5話感想

#17「嘘の城 phase.1」

「ヨーロッパに幽霊がでる。それは、共産主義という幽霊である」
マルクス「共産党宣言」の有名な冒頭です。
今回のヨルムンガンドを喩えれば、こんな感じでしょうか。
極東に幽霊が出る。それは、SRという、ベトナム戦争の幽霊である

ココ・ヘクマティアルが、私兵を引き連れて来日!
東南アジアの覇権を賭けて、SR班とやり合う気満々だ。
「眼に見えない亡霊が、見えることもある」
SR班は、かつて米国の要請により、ベトナムの情報蒐集のため組織された。
戦争が畢(おわ)っている現在では、いわば忘れられた部隊。ひたすら隠密裏に行動していた。
しかし、もう「亡霊」でいるわけにはいかない。派手にやろうと決断するSR班の隊長。

SR班の隊長は、ヒノキ(日野木)一佐。
かつて在籍していたトージョによれば、ヒノキは防衛大学卒のエリート。日本で唯一のスパイマイスターにして「石のような男」。
SRは、日本国内では決まった拠点を持たず、パーキングエリアを転々と移動している。
会見の場に、東京湾アクアラインのPA「海ほたる」を指定してきた。
東京アクアラインを封鎖せよ!」なのか?かれらは踊るのか?
(ノ∀`)

キャスパーたちは、SRの拠点であるジャカルタへ。
市内のホテルで、交渉役のミス黒坂が、キャスパーに直接面会を申し込んできました。黒坂さんの口のかたちがおもしろすぎるw
和睦提案を持ちかけるとみせて、いきなりベルトに仕込んだ極薄のカタナが、閃光とともにキャスパーを襲う!
おもしろ口はそのままに、眼にはぎらつく殺意が!
しかし、余裕のチェキータさん。白刃の脅威をものともせず、膝蹴りをかまして無力化、須臾にして射殺です。
絶えず泛べているアルカイックな微笑が、人を殺しながらなので却ってコワイw
次いで、SR部隊がホテルに雪崩れ込み、銃撃戦となる。チェキータさんはナイフで応戦し、銃でとどめという殺人スタイルは同じです。
接近戦ではナイフが威力を発揮する。傭兵の戦い方が身についているチェキさんです。
ガンスリンガーガール」でも、殺し屋のピノキオが「銃よりナイフ」って謂ってました。
彼の場合は、銃を使うことに心的外傷があったからですが…。
それにしても、チェキータさん勁し。ソロでも充分いけるビーターだw

SR班が、正面からガチンコ対決を挑み、あえなく殲滅させられました。
いかにも無策なのですが、ヒノキ一佐はデキる人とのことなので、何か裏があるのかもしれません。

サブタイの「嘘の城」が気になりますね…。

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2012年10月31日 (水)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第4話感想

#4「キャスパーとヨナ」

キャスパーとココの新たな共通の敵は、日本の商社。
実態が不明なため、幽霊商社とも謂われているようです。
「ヨルムンガンド」日本編の開幕。
「ブラック・ラグーン」にも「フジヤマ・ギャングスタパラダイス編」がありました。
銀次さんと眼鏡美人の雪緒さん、元気かなあ?ってもう死んじゃったのかw

今回は、回想シーンが多めです。
基地で、倶に囚われていた3人の子どもたちを安全な日本へ逃がすために、ココ組への服膺を決めたヨナ。
国際学校へ通っている姿を物陰からみつめて、そっと微笑む。
かつての仲間が、幸福そうに過ごしている姿に安心したのでしょうね。
しかし、直接逢って、久闊を叙することはしません。
少年兵だった頃と同じに、いや、それ以上に、血と硝煙の煉獄に身を置くことになったわが身。
彼らと自分とでは、住む世界が完全に懸隔してしまった。
もう逢えない。逢ってはいけない。
ヨナなりの、決意とけじめの顕れなのでしょう。

幽霊商社の正体は、元防衛省秘密部隊の特別研究班。
何と、トージョの古巣でした。
また、因縁の対決が見られそうですね。

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2012年10月24日 (水)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第3話感想

#3「Dance with Undershaft phase.2」

ココ・ヘクマティアルという怪物

一気呵成に、登場人物を整理し、終焉させました。
ヘックスは、ココへの復讐に、存在を燃やしつくした。
アールは、いつのまにか芽生えていたココ組への勁い絆に気づき、ヘックスと刺違えようとして死んだ。
(ココが、アールがCIAの密偵ということに気づいていなかったのは、ちょっと意外でしたが)
ヘックスの退場は想定内でしたが、アールもか…。
何だか、寂しくなりますね。

ココの怪物性は、彼女自身の放つカリスマの光ですが、同時に、武器商人の超大物として使嗾できる圧倒的な軍事力にも支えられている。その力こそが、怪物に他ならない。
「怪物と戦う者は、自らも怪物とならないよう心せねばならない」(ニーチェ)
自分をも狂わせかねない「力」の怖ろしさを知悉しているからこそ、戦塵のさなかでしか生きられなくなっていた少年兵のヨナを、「枷」=「戒め」として、傍に置いたのでしょう。自身の暴走を戒めるために。
だから、ヨナが殺されそうになったと知った瞬間、彼女のリミッターは解除されて…。

象徴的だったのは、熱烈な愛国者であるヘックスを潰すのに、彼女の祖国の戦闘機をわざと用いて、鏖殺したこと
これほど惨酷なしわざもありません。
力というものの本質を悟ったヘックスは、微笑みながら、泰然と死に赴きます。
「地獄でも戦いましょう」
この告別の賦は、ヘックス自身と、このまま進めば間違いなく地獄へ堕ちるココへの、手向けの詞だったのですね。

アールの死と、ヨナを狙われたことがトリガーになって、ココの内なる「怪物」が解き放たれた?
ココが、あのアルカイックな微笑みの仮面をかなぐり捨てるとき。
それこそが、本物の地獄の始まりになるのでしょうか?

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2012年10月18日 (木)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第2話感想

#2「Dance with Undershaft phase.1」

魔女ヘックス。
愛国者にして、祖国に裏切られし者。

特殊部隊に抜擢されるほどの力量を持った彼女は、女性の進出を不快視する旧弊な軍上層部に疎まれたあげく、軍を辞してCIAに身を投じ、「カットスロート」というはぐれ者部隊を組織して、過激なテロリスト狩りに奔る。
彼女は、因縁のココを精神的に「殺す」ために、ヨナ坊を弑そうとしているようです。

この設定で想い出すのは、「ブラック・ラグーン」の、「猟犬」ことロベルタです。
彼女も、祖国の尖兵となり、世界を転戦し續けた。
しかし、祖国の大義つまり体制そのものが変化したがため、逆に邪魔にされ、追われる者になってしまった。
ロベルタは、原作者の鍾愛のキャラなのでしょうか、巻を費やして、かなりしっかりと描かれていました。
ヘックスは、ちょっと弱いかな。
あの9.11で恋人を失ったという理由づけがあるにしても…。
むしろ、人を誑し込む手腕に長けているという「ブックマン」ことジョージ・ブラックに、危うさを感じます。
「左腕(ヘックス)がサクリファイスを欲するなら、子どもの命の一つもくれてやれ」
大食しながら、平然と嘯くブックマンが、底知れなく不気味です。
それにつけても、ハンバーガーを暴食するショコラーデちゃんのカワイサよw

次回はphase.2。
ヨナくんをめぐる、壮絶な戦闘になりそうです。
これまでの例に倣えば、ヘックスさんも退場してしまうのかな?
惜しい逸材ではあるのだけれど…。

次回「Dance with Undershaft phase.2」

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2012年10月10日 (水)

ヨルムンガンドPERFECT ORDER第1話感想

#1「天を仰ぐ蛇」

ヨルムンガンド2期が始まりました!
東京MXでは、ブラック・ラグーンの再放送と踵を接しており、まさに絶対時間(エンペラータイム)

物語は、1期の掉尾から続きます。
アールは、やはりブックマンの、つまりCIAのスパイだったのね…。
('A`|||)
ココ組は一枚岩だと思っていたので、ちょっと残念です。
ここ暫くは地にひそんで暗躍って感じですが、異常にカンの鋭いココですから、いつまで黒子でいられるかな?

そのCIAは、オペレーション・アンダーシャフトを遂行中。
ココとドクター・マイアミの開発したHCLI(衛星測位補助システム)、その正体は、世界中の通信や流通を監視し支配する、絶対的システムだった。
CIAの目的は、ココを籠絡し、HCLIを簒奪することにあったのです。
アールは、そのために内部に潜入させた密偵、獅子身中の虫なのですね。

しかし、どんな組織にも異端児はいるもので、パラミリタリーオフィサー、略してパラミタのヘックス(魔女)は、個人的な怨恨により、ココの生命を簒奪しようと虎視眈々。
殺し屋を差し向けたのも、彼女の仕業のようです。
殺すだけじゃつまらない。ココの何を壊せば効くのかな」ナドと物騒な事をのたまっています。
バルメと謂いたいところですが、ココさんの偏愛の対象はヨナくん。バルメさんにはお気の毒ですが。
ヨナくんが、生命とか貞操とかいろいろ狙われそうな予感がひしひしとw

野良カレンさんもドクター・マイアミに拾われて秘書だか私兵だかで雇われました。
ショコラーデちゃんは、相変わらずカワイイ。殺伐としたヨルムン世界の癒しキャラです。

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