魔法少女まどか★マギカ第11話・12話(最終話)感想
#11「最後に残った道しるべ」
#12「わたしの、最高の友達」
おわった、なにもかも…。
まどかの破格の魔法力は、やはり「堆積」によるものでした。
時間軸のループによって、因果律の糸が束ねられたことが、まどかという最強の魔法少女を育てた。
ほむらの努力は、ついに、まどかを破滅に導くための布石にしかならなかったのです。
そのことを知って、絶望に沈むほむら。ソウルジェムが、みるみる黒くなって…。
「ワルプルギスの夜」の正体は、映像を見る限り、自然力の厄災とも読めるのですが。
もしかすると、ほむらの魔女化だったのかな?
まさに、無限ループなのだけれど。
今回、喩えようもなく美しかったのは、魔女化する寸前の魔法少女たちを、まどかが再生の女神として救っていく場面です。
「魔法少女が魔女になるまえに、すべての魔女を消去する」
まどかが、魂と引き換えに願った、祈りです。
それは、魔女化する自分をも消去するという、究極の願いでした。
やはり、そうだったのか。
義務を容認する幸福…。
(/_<。)
「神という概念」になって、世界中に顕現し、不幸な魔法少女たちを救ったまどか。
愛する人たちのまえから、人としては消滅した、まどか。
でもこれは、本当は何を意味するのか?
穢れた魔女(大人の女性)になる前に、穢れを摘み取るというのは?
彼女たちは、無垢なまま消える。さやかのように。
現実世界では、彼女たちは死体となって残る。
それは、美しい夭折。
つまり、「自殺」そのもののアナロジーなのです。
制作側からの、恐るべきメッセージ。これを見逃してはいけません。
さらに、忘れてはならないのは、美しい理想の陰には、必ず影が生じること。
いつの世でも、それを、闇で支えている存在があること。
まどかが書き換えた「美しい宇宙」を継ぐべき責務を負ったのは、暁美ほむら。
たった一人の友達を失い、生きる意味を失ってなお、彼女は、永遠にながらえなければならない。
まどかの理想を支えていくために。護持し続けるために。
ED後の、ほむらの「黒い翼」顕現が、とても象徴的です。
彼女は、まつろわぬ神々になったのか?
それはたとえば、堕天使サタンといったような…。
これもまた、制作側からの、暗に込められたメッセージなのでしょう。
この世に、まったく穢れていない(無垢な)大人など存在しないので、つまりは、永遠にアドレッセンスにとどまり続ける。それが、まどかの理想世界。
けれど、呪いは生まれ続ける。
肩代わりして、永遠に戦い続ける運命をあえて背負ったのが、ほむら。
まどかの祈りにかかわらず、地には妬みやらなにやら、負の感情が遍満している。
美しい理想だけでは、世界は救えないんだよ?
そんなほむらの呟きが、きこえてくるようです。
まどかのために、その美しい理想を具体的に支えるために、魔獣狩り、というかたちで引き継いだのが、ほむらなのだから。
以下、偶感です。
クレオパトラ、卑弥呼、ジャンヌ・ダルク。
つよい願いをもった彼女たちは、みんな魔法少女だった。
まどマギは、歴史さえも束ねましたね。まさに、壮図です。
「オレは、歴史さえも下僕にできるッ!」(JOJOのディオの台詞)。
まどかが、「神という概念」に至るという設定に、フレドリック・ブラウンの名作短篇『唯我論者』の皮肉を想起しました。
以前から感じていたのですが。
まどかマギカは、過去の魔法少女作品に対する、異議申し立てといえるでしょう。
すべての画期的な傑作は、既存作品への異議申し立てから始まる。これは、文学史上のことわりです。
セルヴァンテス『ドン・キホーテ』しかり。
ジョイス『ユリシーズ』しかり。
「幸や不幸はもういい。どちらにもひとしく価値がある。希望にはあきらかに、意味がある」
(業田良家『自虐の詩』の名言を本歌取り)
最後に残されたメッセージ。
全編を要約すると、これに尽きるかな。
さて。
物語は、語り終えられました。
あとは、癒しがあるのみです。
弟が、まどかの名と姿を、地面に刻んでいました。
まどかママは、よく分らないけれど、なんだか懐かしい、と。
愛するものたちの心に、かすかな残像として、生き続けるまどか。
一掬の救いでした。
ありがとう。
そして、スタッフの皆さん、お疲れさま!
現実の厄災によって放送延期されるという、ある意味、この作品にふさわしい困難を乗り越えて、完結に至ったことを、まどマギを愛する皆さんとともに、言祝ぎたいと思います。
そして、これほどの量の二次SSを書かせていただいたのも稀有なこと。NOIR以来でした。
それだけ、のめり込んで視聴できた作品だったといえます。
2011年を象徴する名作として、まどか★マギカが語り継がれることを祈って、擱筆します。
ありがとうございました!
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