閃光のナイトレイド第13話(最終話)感想
#13「せめて、希望のかけらを」
高千穂は、死んだトワへの愛惜ゆえに、新型爆弾による未来の悲劇を阻止したかったんですね。
預言を無理強いし、彼女の死期を早めてまで、聞き出した未来。
何としても、無駄にしたくなかった。そんな真情が、見え隠れしていました。
預言者である静音が、最後の最後で、高千穂に背いた。
葛が、「納得できません!」と叫んで、やはり高千穂を離れました。
これも想定内でしたね。
ただ、高千穂は、軍国日本の走狗とか悪人ではなかったにしても、武官としての桎梏から、やはり逃れられなかったようです。
雪菜ちゃんの兄ということもあって、彼には同情的だったのですが。
上海を標的に選び、それを変えなかった時点で、思想的背景を喪失してしまったのでしょう。
何も語らないまま死亡したのは意外でした。雪菜に、いろいろ胸の底を吐露してから大往生、かと思っていたので。
そして、桜井が、またしてもやってくれちゃいました!二転三転の背信漢っぷりです。
組織の非情さや不条理感を演出したのでしょうけれど、ね。
単純明快だったスパイ冒険小説(『十三階段』)が、複雑な世界情勢を反映したエスピオナージュ(『ディミトリオスの棺』『寒い国から帰ってきたスパイ』)に進化したように。
確かに予想外だったけど、底知れない不気味さというより、唐突さが先に立ってしまったのは残念でした。
この後は、一気呵成の展開。
総花的ではあったにしても、爽やかな結末を用意してくれました。
葵が、新型爆弾を虚空に飛ばし、そのまま消息を断つ。
ひとり、新京に戻ってきた雪菜が、店を構えるまでになった風蘭と再会。
葛とも、しばらく会っていないと。
繁盛する店内に飾られた、葵の撮影したメニュー写真。
その中に、皆で撮ったポートレートが。葵、棗、雪菜、風蘭…。
そこには、葛の姿もあった!
「葛の写真ならあるから、合成しよう」との、葵の言葉を思い出した雪菜。
そのとき、懐かしい、下手くそなヴァイオリンの音色が。
思わず路上に飛び出した雪菜だが、そこには、泥沼に向かう軍国日本を象徴するかのように、関東軍の行進が…。
大団円よりも、現実の割り切れなさを意識した、鮮やかなエンディングでした。
名作映画で、同じようなラストシーンを見たような気がするけれど、残念ながら思い出せません。
えーと、せっかくなので、ちょっとツッコミ入れさせてください。
高千穂「降りたのか?神託が」
預言者「もう、ここまでといたしましょう」
だ、だったら、何のためにお籠もりしたんですか静音さん!?
(たぶん、雪菜を預言者とする神託が降りたので、沈黙したのかもしれません)
桜井「汚れ仕事ばかりだよ」
てゆーか、やっつけ仕事のような…。
桜井の、明日はどっちだ!?
市ノ瀬「ボクの計算中で、いちばん信頼できる組み合わせで」
ただの当てずっぽうかよ!ホントに爆発するのか!?
桜井が、壱師に記憶を消された!
「どこなんだ、ここは…」
狸オヤジから、ただのボケ老人に降格!?
ここからは、締めくくりです。
桜井の手駒と見えた壱師が、実は最強の監視者だったのには驚かされました。影の大物だったんだ。
ワーキングの松本麻耶じゃないけど、壱師が、最終回で初めて喋った!
CVは…海外の方だったんですね。だから、公式では「?」だったんだ。最後の最後まで、正体を明かさないために。
江戸川乱歩好きとしては、葵の『屋根裏の散歩者』の引用に惹かれました。
高千穂が、預言者をとおして見た未来は、しょせんは、屋根裏から見た狭い世界(可能性の一つ)だったのではないか。
おもしろい視点です。
すべては、歴史の審判と評価を経てみないと分らない。万物流転。
それがナイトレイド全編の示した結論でした。
意欲的な問題作でした。あともう一つ、もう一つだけ欲しかったかな。隔靴掻痒…。
でも、最後まで引き込まれて視聴したのは確かです。
スタッフの皆さん、力作をありがとう!お疲れさまでした!
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