キノの旅第11話
なるほど!キノはこうして「誕生」したんですね!
「紅い海の真ん中でa・b」
「大人の国」
紅い花で溢れた野に、伸び伸びと横になっているキノとエルメス。
aは現在、bは過去。画面を埋めつくす真紅が、時を超えて照応し響き合う構成が象徴的でした。
この物語には先代のキノがいて、大人の国で殺害されたのか。
それも、少女(キノ)を大人の暴力から護ろうとして、刺されて死んだ。
そんな因縁があったとは…。
少女と先代キノとの出逢いは、偶然でした。
宿屋の娘である少女は、旅の若者に興味津々です。
『仕事は何をしてるの?』
少女の素朴な問いかけに、若者は、旅をしてるよと答えます。旅をしてると楽しいことの方が多いから、とも。
少女は云います。
「仕事はイヤなもの。楽しいのなら、それは仕事じゃない」
大人たちの受け売りでしょうが、怜悧な口の利きようは、後年のキノを髣髴させます。
ナマイキともいうけれどw
手術を受ける前からこれほど洗脳されていたら、危ないところでしたね。
この国では、子供はすべて12歳になると、イヤな仕事に適応できるよう、脳手術を施す決まり。
ロボトミー手術ってヤツか。いくら国の事情とはいえ、とんでもない話です。
長居は無用と、早々に退去を決めた先代だったのですが。
「門を出るまで安全を保障します。ここは大人の国ですから」
しかし、先代キノが振り向くと、父親が包丁を構えていた!
「そこの娘を処分するためですよ。子供は大人の所有物です。失敗作を処分する当然の権利があります」
大人の国って、ヤバ過ぎる大人の国でもあったのです。
先代キノは優しかった。そして弱かった。
少女を庇おうとして身を挺し、凶刃に斃れて、敢えない最期を遂げる。
そんな不条理きわまる惨劇を、眼の前で視てしまった少女キノ。
「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」
レイモンド・チャンドラーの名作「ロング・グッドバイ」における、探偵フィリップ・マーロウの至言を、ゆくりなくも想起しました。
少女の心には、若者の優しさとともに、「強くなければ生きていけない」現実の過酷さが、深く刻まれたはず。
だからこそ、外へ飛び出した彼女は、師匠に附いて射撃などの技術を学び、自分を護るすべを身に着けたのでしょう。
「これから、どうするの」
「いつかと同じさ。何処かへ行こう」
「そうだね」
先代の自由な精神を受け継ぎ、しかも生きる強さも身に着けた、いわば進化形の「旅人キノ」が、ここに誕生したのです。
ラスト、紅い曠野に流れるキノの歌が、レクイエムのように聴こえました。
恩人である旅人への、そして、弱い少女だった自分への鎮魂歌として。
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