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2017年12月14日 (木)

このはな綺譚第11話

神様の休日は、夜を徹しての酒池肉林。いや、肉林は少なめだったかな。
おねえ神に舐められる棗も、ちょっと見たかったかも(笑)。

今回も、脇を固める声優さんが豪華でした。
戦の神は、大塚昭夫さん。重鎮っぽい使われ方だから、まだ問題はないのですが。
芸能の神Aは置鮎龍太郎さん。芸能の神Bは草尾毅さん。
おねえな演技が大爆発です。悪ノリに近いほどの熱演です。
何という置鮎さんと草尾さんの無駄遣い!
思わず慨嘆してしまったのは私だけではあるまいw
でも、お二人とも楽しそうに演じているのが印象的でした。

「このはな」を視聴し終わったあと、いつも心に残る「何か」。
それは、物語としての、骨太のメッセージです。

昔はいくさが多くて、祭りも多くて、活気があった。
弁天さまにも紛う美女に化生した女将が、往時を懐かしみます。
とはいえ、ハロウィンみたいな仮装行列だって悪くはないし、戦争など起こらないに越したことはない。
戦神が無聊をかこつ太平楽な世の中も、決して捨てたもんじゃない。
だけど、もっと日本古来の、固有のものを、みつめ直すべきなんじゃないか。大事にしてもいいんじゃないか。
Aパート「神様の休日」のエピソードには、原作者のそんな深い想いが込められている気がします。

同じことが、Bパートの、お菊ちゃんとリリィのエピソードにも云えます。

ラスト、持ち主の女の子に見出され、幸福そうに微笑むリリィちゃん。
「よかったね、リリィちゃん」と、すなおに落涙することもできるでしょう。
でも、そんな感傷だけでは終らない「何か」が、このエピソードにはあるのです。

菊「これからは、思う存分人間を呪っていいのよ」
リリィ「あなた、人間が憎いの?」
菊「あんな量産型の人形に乗り換えやがって!」
分ります!ガンダムがグフに乗り換えられたほどの口惜しさなんですよね!(違

それは冗談ですが、お菊ちゃんの狂態を笑いながらも、何処か落ち着かない気分にさせられるのは。
彼女の呪詛が、実は、われわれ自身の呪詛に他ならないからです。
お菊ちゃんは「わたしはお菊じゃない!」と繰り返し訴えて、誰にも聞き入れてもらえません。
思わず笑ってしまうのですが、考えてみれば、われわれの名前だって親が勝手につけたもの。自分で選んだものじゃありません。
なのに、一生付き合わなければならない。不条理といえば、これほどの不条理はないでしょう。
だから、お菊ちゃんを笑えないのです。

『人形は、人間に愛されなくなったら、それが寿命』
捨てられたリリィは、静かに呟きます。彼女の諦観が、われわれの心を打ちます。何故でしょうか。
人間だって同じだからです。
人が一所懸命生きようと努めるのは、畢竟、この世界に居場所が欲しいから。つまり、「世界に愛されたい」からに他なりません。
しかし、人間も結局は、リリィと同じ運命を辿ります。
だから、心が壊れてしまう。
世界なんかに最初から期待しなければ、心が壊れる辛さを味わわずに済みます。
でもそれは、とても寂しい人生になるでしょうね。

リリィちゃんが、あの子に愛された想い出だけを抱いて、ひっそり街の片隅で消えていくラストだって、作者は選べたはず。
でも、リリィちゃんにもお菊ちゃんにも、暖かな救いが齎されました。
これだけの伏線を張っての上だからこそ、感傷に堕すことのない感動が現前するのですね。
「このはな」という作品の、腕の冴えを感じる瞬間でした。

 

次回「大晦日の奇跡」

戦の神(大塚昭夫)
芸能の神A(置鮎龍太郎)
芸能の神B(草尾毅)
リリィ(前田玲奈)
少女(白城なお)
彼氏(中村太亮)

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