魔法使いの嫁第10話
失われた自我を求めて。
魔法使いエリアスの「誕生」が描かれました。最初から魔法使いというわけではなかったんですね。
限りなく精霊や妖精寄りだけど、人間も入っている。そんな奇妙なハイブリッド生命体が彼だったのです。
気がついたら、森を歩いていた。それ以前の記憶はただ一つ「赤」。
「夜が二つ脚で歩くような」。リンデルは、初対面のエリアスの印象をそう語りました。
夜の闇のように漆黒で、影のように不確かな存在。
魔法使いとして自我を得たのちも、自分は何者なのかという根源的な不安は消えない。
ゆえに、エリアスは人間であるチセを傍に置き、保護者を以て任じることにより、失われた自我を確立しようと無意識に欲したのかもしれません。
チセは未完成な人格かもしれませんが、エリアスも決して完璧な存在ではなかった。
二人の関係性は、決して一方的なものでないという可能性が示唆された瞬間でした。
リンデルの師はラハブ。旧約聖書由来の名です。
でも、聖書においてラハブは娼婦の名なので、このラハブ姐さんとは直接の関係はなさそうです。
師ということは、数百年を遥かに超える無窮の時を生きたリンデルよりも、さらに長命ということに。
チセは、魔法使いが長命であることをやっぱり知らなかったのですね。
「リンデルさんは、いつから生きているんですか。ほかの魔法使いも、みんな長生きなんですか」
「あの馬鹿骨め!何も説明しとらんではないか!これでは…」
エリアスは、チセよりずっと長命。一緒に暮らせる時はきわめて短い。その事実を告げるのが怖かったのでしょうか。
エリアスにとっても、チセはやっと見つけた安息の地。だから失いたくない。
「神々や精霊は、君をいつも見ていてくれる。だから安心して自分自身を救いなさい」
ラハブの言葉は、生まれたてのエリアスの柔らかい心に沁みたはず。
その救いをチセにも齎したい。そうすれば、彼女も自分も、ともに救われるはず。
エリアスは、そう願っているのかもしれません。
魔術師レンフレッドは、相変わらず心配しています。
「このままおまえと暮らすだけにさせていたら、彼女はダメになるぞ」
他人なのに、まるで小姑みたいですなw
ともあれ、チセが彼女自身を救うための自立への道が、徐々に見えてきました。
「私も、あなたに云えてなかったことを話します」
次回、ついにチセの過去が明確になるのかな?
ラハブ(三石琴乃)
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