キノの旅第5話
Aパート。「旅人の話」
モトラドの深き孤独。
エピソードは、記念館から始まります。
この国を救った偉大な旅人のメモリアル。旧い歪んだ政治体制を打倒して初代大統領になった彼は、まさに立志伝中の人物というわけです。
記念館には、彼の偉大さを示す陳列品の数々が。女性の案内人が、得意げに説明を披瀝します。
「彼が使っていた園芸用のスコップ。花を植えて廻っていたのでしょう」
スコップはトイレ用。
「彫刻入りのすばらしいナイフ」
お土産用の大量生産品。チープな幸運ナイフ。
伝説って、こうやって捏造されるのですねw
喋るモトラドはレジェンドのあかし。
しかし、エルメスの問いかけに応えて、老いたモトラドは意外な台詞を。
ここは地獄だ。モトラドは、走るために生まれたのに。
ここから連れ出して走らせてほしい。さもなければ、破壊してほしい。
キノは静かに告げます。
どちらもできない。この国の人に憎まれて、僕が壊されちゃうから。
まさに、地獄よりも地獄的な状況です。でも、不幸なモトラドに、一掬の救いが暗示されました。
キノに憧れる少年。宿屋を継ぐのでなく、外に出てみたい、旅人になりたい。どうすればなれますか?
「記念館のモトラドに同じ質問をしてみるといいですよ。ひょっとしたら、答えをくれるかもしれない」
少年は、記念館を訪ねたのか?モトラドに話しかけたのでしょうか?
結末は明示されませんが、視聴者の心に委ねられた「開かれた結末」がすてきでした。
案内人(櫻井浩美)ABのゆりっぺが懐かしい
モトラド(斧アツシ)レクリのブリッツさん。相変わらずシブいな
Bパート。「嘘吐き達の国」
嘘の幸福。幸福の嘘。
城門の外で、旅に出たという恋人の帰りを待つ男は、元革命派の実行部隊リーダー。本来なら建国の英雄なのに、うらぶれた姿は何故?
男は、革命の日に、逃亡を図る国王一家の馬車を手榴弾で爆破した。
ところが。
死んだ王女は、農家の娘に身をやつした恋人だった。男は、恋人を自らの手で殺してしまった。
以来、気がふれた男は、森の小屋で家政婦に扶けられつつ、恋人が帰ってくるのを待つだけの日々を送っている。
しかし、家政婦こそは、実は恋人である元王女だったのです!
素朴な疑問。
彼女が家政婦として雇われ、初めて再会したとき、どうして恋人だと判らなかったのか?別に整形したわけでもなさそうなのに?
その疑問は、すぐに氷解しました。
彼もまた、佯狂のふりをしつつ、嘘をついていた。家政婦の彼女が恋人だと知っていて、気づかないふりを続けていたのです。
彼も彼女も、互いに嘘をつきながら、死ぬまで暮らすのでしょう。それが幸福。嘘の上の幸福。
エルメス「嘘吐きだね。ここの国の人たちは、みんな嘘吐きだ」
されど、優しさゆえの嘘は赦されるのではないか?
真実は耳に痛い。真実は人を傷つけたりもする。
我々もまた、ささやかな嘘をつきながら、何とかかんとか日々を送っているのかもしれません。
キャスト、盤石の二人です。
男(石田彰)
女(名塚佳織)
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