氷菓第18話感想
#18「連峰は晴れているか」
「奉太郎とえるちゃんの関係は」
そんな副題をつけたくなるような、二人の「気づき」が爽やかに描かれた話数でした。
今回扱われた「謎」そのものは、比較的単純です。
奉太郎は、学校の上を通過するヘリコプターの音に、中学時代の英語の恩師、小木先生を想い出す。
「小木先生は、ヘリが好きだった」
しかし、里志も摩耶花も、覚えていない。
ようやく、摩耶花が、その日先生が、ずっとヘリを気にしていた事実を想い出す。
本当に、先生はヘリが好きだったのか?
何故、自分(奉太郎)だけが、そう思い込んだのだろう?
ふつうの人なら流してしまうような些細な事が、奉太郎は気になって仕方がありません。
徹底した省エネ主義者の奉太郎が、「気になること」を調査するために、自ら動いた!
「わたし気になります」女王のえるちゃんが、何だか嬉しそうですね。
何というか、ようやく百年の知己を得た想いなのかも。
「氷菓」シリーズは、日常の謎を取り扱っています。
謎に対する解もさることながら、動機や真相や解決が、関係者に齎す変化を、丁寧に繊細に描き切ろうとしています。
今回、象徴的なのは、真相を発見した後に奉太郎が洩らした感慨です。
「実際はちがうのに、(確かめもせずに)小木がヘリが好きだったなんて気楽に言えない。それは無神経だってことは分ってる」
そう、非常に「倫理的」なのです。
名探偵が快刀乱麻の推理で事件を解決し、めでたしめでたし。
そんな、かつての「幸福な(自己満足的な)ミステリ」への「異議申し立て」の匂いすら感じてしまいます。原作者のこだわりが看て取れます。
名探偵は、その推理により、人を傷つける可能性を孕んでいる。
真相が白日の下に曝されるのは、必ずしも、関係者の救済を意味しません。
場合によっては、関係者の心の古傷を抉り、誰も幸福になれない事だってあり得るでしょう。
まして、名探偵が事件解決において誤謬を犯したら、たとえ後で修正されたにしても、与える影響は計り知れないものがあるでしょう。
日常の謎ならまだしも、殺人など重犯罪が絡んでいるときはどうでしょうか?
そんな、後味の悪いミステリの系譜があります。いわゆる冤罪ものです。
それも、刑が執行されてしまった後に真相が判明するという、救いの欠片もない暗黒作品です。
ジュリアン・サイモンズ「二月三十一日」や、ラストガーテン「ここにも不幸な者がいる」など。
小説だと分っていても、その読後感は非常に不快なものが沈湎したのを覚えています。
水谷豊主演の人気シリーズ「相棒」で、水谷演じる杉下右京は、人情解決を排し、ときにリゴリスティック(厳格主義的)と見えるほど「正義」にこだわります。
それは、杉下の倫理観もさることながら、誤謬が赦されない名探偵の宿命を、ひしひしと肌で感じ取っているからだと、私などには思えてしまいます。
奉太郎が、小木先生自身に「ヘリが好きだったんですね」と誤謬をぶつけてしまったわけではありません。
にもかかわらず、自ら齟齬の可能性に気づき、裏付けを取ることによって即座に修正した奉太郎に、清々しいものを感じました。
作品は、作者そのものではありません。でも、「文は人なり」と謂われるように、作者の個性は、必ず投影されるものです。
原作者の米澤さんは、きっと誠実な人なのでしょう。
さて、奉太郎とえるちゃんの関係ですが、ふと連想したのが、過日BS放映された探偵ドラマ「シャーロック」の「ライヘンバッハ・ヒーロー」。
モリアーティが、最期の対決で、名探偵シャーロックに投げかけたことば。
「君は僕だ」
大犯罪者と名探偵との、不思議なシンパシーを、過不足なく表現し得た名台詞です。
えるちゃんは、「気になります」を共有できるようになった奉太郎に、こう告げたくて、うずうずしているかもしれません。
「奉太郎さんは私なんですよ?」
親和力に充ちた関係性に気づいた二人の、その後の仲は、どう進展するのでしょう。
もう、いいからくっついちゃいなよYOUたち!そんな感じになるのかな?
次回「心あたりのある者は」
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第十八話 連峰は晴れているか 公式サイトから上空を飛ぶヘリコプターの音で、中学時代の英語の小木先生のことに思いをはせる奉太郎。ふと、小木先生がヘリ好きだったことを思い出す。ところがどうやらそれは真実ではないらしい。里志も摩耶花もそんな話耳にした事がない、と言うのだ。 クラシックを流すと椎茸が大きく育つと部室で 話す千反田。電気を流すと危機感を覚えて大きくなるらしいよ。小木はヘリが好きだったなと思い出す奉太郎。中学の英語教師の小木。奉太郎の説明でそんなこともあったと思い出す摩耶花。里志は自衛隊ヘリの編... [続きを読む]
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奉太郎がまさかの気になります宣言!?
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事の発端は、シイタケ栽培に音楽や雷が発育に良いと話していたら、
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