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2012年8月27日 (月)

氷菓第19話感想

#19「心あたりのある者は」

登場人物は、奉太郎とえるちゃんのみ。
舞台も部室内にほぼ固定という、会話による推理劇でした。
お話の構成は、ケメルマンの名短篇「九マイルは遠すぎる」を踏まえているようです。リスペクトと謂ってもいいかもしれません。

動きが最小限なだけに、作画や演出に、制作側の工夫が傾注されていました。
とりわけ、奉太郎の推論に「マジメにやってます?」「不自然です」と抗議するえるちゃんが清新で、ステキな蠱惑を放っていました
「愚者のエンドロール」事件のとき、3人の名(迷)探偵の推理に不服そうだった彼女ですが、あのときは、ウイスキーボンボンで酔っぱらっていたという伏線がありました。
裏返せば、今回の反駁は、「奉太郎さんは頼りにならない人じゃありません!」って力説しているわけで、これがまたカワイイ。
堂々と反論ができるのも、それだけ、「二人の距離」が縮まった証左なのかもしれませんね。

きっかけは、些細な事でした。
えるちゃんの「奉太郎さんの推理力は才能です!」という絶賛を浴びて、照れ隠しか、元々の持論ゆえか、偽悪的な態度をとる奉太郎。
「推論の達人なんかじゃなくて、ただの運の良い奴。頼りになんかならない」ことを疎明するために、どんな状況にもそれなりの理屈がつけられる事を証明しようと試みる。
折よく、校内放送が流れます。
「10月31日、駅前の巧文堂で買い物をした心あたりのある者は、至急、職員室柴崎のところまで来なさい」
さて、放送を受けて、奉太郎の推論が開始されます。
「全生徒が揃う翌朝でなく、放課後のいま放送した」
「生徒指導部でなく、教頭先生じきじきの呼び出しである」
「通常なら放送を2度繰り返すのに、1度しか放送しなかった」
「昨日の事を、わざわざ10月31日と読み上げている」
これらの断片的な手がかりから、奉太郎は次のような推論を行います。

緊急性があること。
もはや生徒指導部では手に負えない、管理職レヴェルの大事(おおごと)、つまり犯罪性があること。
10月31日と読み上げたのは、元になる文面(謝罪文)が存在するということ。etc.

推論に夢中になったあまり、二人が最初の目的を忘れ果ててしまうのはご愛嬌ですね。
翌朝の新聞地方版で、奉太郎の推論が正鵠を射ていたことが確認される、というオチがつきました。

原典と目される「九マイルは遠すぎる」の名推論は、話者である「私」の挑戦に、探偵役のニッキイ・ウェルト教授が応じる場面から始まります。
九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ
たったこれだけの言葉から、教授が、驚くべき推論を展開します。
そして、推論は現実の殺人事件と見事に一致。解決に至ります。
きっかけは、今回の「氷菓」と同じく「推論の否定」の証明のはずだったのに、結局は…というオチも類似ですね。

ミステリの愉しみとは、「論理のアクロバット」。
推論そのものは蓋然性に頼っていても、ロジックの流れをスムーズにつくることで、読者を首肯させれば、作者の勝ち。
「そうかなあ?」「不自然だ」と読者に思わせてしまったら、失敗です。
謝罪文について、疑義を抱いた方が多かったようですね。
逆に謂えば、謝罪文がなくとも、以下のような捜査を経て、神山高校に辿り着くことができるはず、というのが衆目の一致するところなのでしょう。
①小学生相手のお店で、一万円札を使うお客は珍しく、注意を引きやすい。
②神山高校の制服を着た客なら、猶更である。
③ゆえに、偽札事件が発覚すれば、神山高校の生徒を疑うのは容易なはず。
ただの想像ですが、学校には「教育の自立」から派生する「聖域」「警察権力の不可侵」概念があるので、状況証拠だけで警察が踏み込むのはムリがある。
それを不可避に見せるには、謝罪文のような具体的証拠が必要だと、作者が気を廻した結果なのかもしれません。

次回は、お正月ネタのようですね。
えるちゃんの着物姿とか、いろいろ愉しみです。

次回「あきましておめでとう」

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