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2012年6月24日 (日)

氷菓第9話の「メモ」の法則性について

とあるブログで、「氷菓」#9のホームズ作品に関するメモの法則性について、意見を索める体の記述があったので、以下のコメントを書き込みしました。

◎や×などの表示は、生真面目な本郷さんが、十戒その他に違反していないか、チェックしたのではないでしょうか?
一例を挙げると、
×「花婿失踪事件」(ノックス-10 変装による二人一役を用いるときは、予めヒントを提示すること←していないので不可)
◎「唇の捩れた男」(ノックス-10 二人一役トリックだが、犯人が役者経験のあることをきちんと示しているので可)
原作未読だし、外れても責任は取れないのですが…(笑)。

これについて、在り得るが、赤毛連盟が△になっている。これは名作なので、アンフェアというのはやや腑に落ちない。という趣旨のリプを頂きました。
「わたし、気になります」が昂じて、さらに追記したくなったのですが、畏敬するブロガーさんでもあり、また、これ以上コメントするのは、やり過ぎだろうと判断し、自分のブログで記事にすることにしました。

最初にお断りしておきます。これはミステリ好きの単なる「遊び」「試論」ですので、読む方は、そのように受容してもらえれば幸甚です。

まず、前提になるのは、ノックスやヴァン・ダインの規則は絶対ではなく、それを以て作品の価値を計ることはできない、という事実です。現実に、十戒や二十則に反したミステリ名作は、いくらでもあります。
それら名作を規則の物差しだけで計り、いちいちアンフェアだと言い立てるミステリファンは、今や恐らく皆無でしょう。
そもそも、十戒も二十則も、ホームズ物の連載がすべて畢った後に発表されたものです。
ゆえに、先行作品であるホームズ物が、仮に規則を遵守していなくとも当たり前であり、名作性を聊かも損なうものではないのです。
しかし、ホームズ物と規則でしかミステリを勉強していない本郷さんは、規則を「絶対」だと思い込み、ホームズ物との温度差に混乱し、自縄自縛に陥ってしまったのではないか?それが、私の推論です。

この観点から点検すると、「赤髪組合」が△(微妙という意味?)なのは、想像するに、ノックス-3の「秘密の通路を用いてはいけない」に抵触すると、本郷さんが判断したためではないでしょうか?
「赤髪組合」が名作なのはそのとおりですし、「秘密の通路」かどうかは疑義もありますが、問題は、ミステリ初心者である本郷さんがどう受け取ったか、ですので。

参考までに、他の、×のついた作品について、同様に列記します。

×「オレンジの種五つ」(ヴァン・ダイン-13「秘密結社に属する人物を犯人にするのは不可」)
×「まだらの紐」(ノックス-4「科学上未確定の毒物は不可」に抵触すると判断した?)
×「花嫁失踪事件」(ヴァン・ダイン-3「不必要なラブロマンスを附け加えるのは不可」に抵触すると判断した?)
×「三破風館」(ヴァン・ダイン-17「プロの犯罪者を犯人にするのは不可」)
×「覆面の下宿人」(ヴァン・ダイン-5「動機のない自供によって事件を解決するのは不可」)

ノックスの十戒やヴァン・ダインの二十則が発表された1920年代後半はミステリ・ブームであり、巷には俗悪で程度の低いミステリが溢れ返って収拾がつかなかった時代です。
そんな風潮に義憤や危機感を感じたミステリ・マスターの二人が、一石を投じるために、また、遊びの一つとして、ルールブックを発表したのが、当時の状況でした。
興味のある方は、WEB検索で当たってみてください。首肯できる条項も多いけど、かなり時代錯誤な条項もあって、けっこう苦笑できます。

いずれにせよ、氷菓の原作は未読であり、まるっきり的外れの可能性もかなりありますので、ご笑覧いただければ幸いですw

追記
ある意味ホームズ物のネタバレ満載ですが、ミステリ好きにおいてホームズ物は常識の範疇なので、ご寛恕いただけるのではと思っています。

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