夏目友人帳肆第5話感想
#5「過ぎし日の君に」
されどわれらが日々。
夏目が、まだ自分の殻に閉じ籠っていたころの、緒方ユリコとのささやかな交情のお話です。
神社の石段を踏み外しそうになり、道路へ飛び出してトラックに轢かれそうになるユリコさん。
その瞬間、何物かによって救われ、捻挫だけで事なきを得た。
見舞いに来た親友たちが、偶然に夏目を見かけたという男子の話をする。
プルースト「失われた時を求めて」じゃないけれど、これをきっかけに、回想場面が始まります。
貧しい親戚に引き取られ、転校してきた夏目。
緒方母は、虚言癖とか粗暴という噂を信じて、夏目に近づくなと娘を諭します。
母一人娘一人なので、心配だという親心は理解できるのだけれど…。
女子を平気で蹴り倒す夏目に興味を持った?ユリコは、孤立していく彼を庇い、護ろうとする。
だが、医療費なら借りればいいじゃない、と心無いことを言ってしまう。夏目の置かれた立場を慮りもせず。
こだわらず、傘を差しかけてくる夏目。そのときユリコの心に何か「情」が兆したのか?それは分らないのですが。
ガラス破損事件のせいで、保護者が学校に呼び出され、夏目はまた転校することに。ユリコとの短い交情は、こうして終わりを告げました。
一方、夏目の側の事情は。
弱弱しい妖「すねこ」を、黒鎌から救ったばかりに、自分が黒鎌に追いかけられるはめに陥った。
町を出ていかざるを得なくなった夏目は、黒鎌と対峙します。
残された人は関係ないだろう。
黒鎌の「おまえなど大嫌いだ」は、含羞によるものでしょう。
しかし夏目は、「人間にも妖にもきらわれる」と、ストレートに受け取ってしまいます。
心を閉ざしている夏目には、人情というか妖情?の機微は伝わらない。
もちろん、妖の心を人間のそれと一緒にしては不可ません。あくまで、妖は超越的な存在なので、夏目が好きで追いかけたというより、やはり「悪戯心」に近いものだと思います。
それでも、呪いをかけると嘘をついてまで夏目に接近したのは、ある種の「親和力」がはたらいたのは間違いない。
人間の災厄を引き受けるのが役目という黒鎌。
神社の前で奇禍に遭いそうになったユリコを救ったのも、きっと渠(かれ)なのでしょうね。
藤原夫妻に引き取られ、ニャンコ先生と邂逅し、よい友人にも恵まれた。
徐々に、彼の心は融け始めていたのです。
そんな夏目の下に、あの「すねこ」が再び現れた。
ユリコに遺した夏目の言葉。
「ここは、少し楽しかったよ」
この一言が、全てを表現しつくしています。
ユリコさん、赤点はともかく、あのメガネはチャームだったな。
しかも、窓ガラスが内側に落ちていた事実を指摘するなど、まるでコナンくん。とても赤点常連さんとは思えない頭脳の冴えです。
夏目に蹴り倒されたときのモロ脚にひそかに注目したのはヒミツだww
次回「硝子のむこう」
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (29)
最近のコメント