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2010年12月31日 (金)

屍鬼第22話(最終話)感想

#22「蔡蒐話」

夜半に視聴していて、しだいに慄えが兆してくるのを止められませんでした。
何かとんでもないものと向き合っている、と直観したときの、あの心のふるえです。

閉鎖的な村で、凄絶な屍鬼狩りに淫する村人たち。
審判の日の神の浄火の如く、刻々と迫りくる山火事。
最後の破局に向かって、次々と死んでいく登場人物たち。
そして、屍鬼になってもなお神の恩寵にすがろうとする沙子に、やさしく諭すように呟く室井のことば。
神は語らない」。
この台詞で、慄えは最高潮に達しました。

北欧の神秘主義映画の名匠イングマル・ベルイマンが大好きです。
ことに偏愛しているのが「神の三部作」と呼ばれる
鏡の中にある如く冬の光』『沈黙』。
なかんずく、神の沈黙を真向から描破した『沈黙』は、私の内なるベスト作品の一つです。
三部作の通奏低音である「神は語らない」が、『屍鬼』と呼応して、心の琴線を震わせたのかもしれません。

ざくろに続いて、最終話のみ感想です。
録画はしていたものの、通して視聴していないため、大局から屍鬼を語るだけの情報を持たないことを、まず告白しておきます。

心を揺さぶったのは、必死に逃げようとする沙子の姿であり、恵の惨酷な死であり、夏野と辰巳の相討ちだったことは間違いありません。
しかし、いくら沙子が哀れだといっても、恵が悲惨だったといっても、感傷で語るわけにはいきません。
屍鬼はやはり異類であり、人を脅かす存在であることに変わりはないのだから。
だから、どちらが正であり邪であるのか?どちらが生き残るべきだったのか?などの判断は避けたいと思います。

「こんな村なんか、なければよかったんだ!」
最期まで村を呪いながら、ほとんど私刑同然の酷さで殺されていった恵。
放映開始の当時は、恵ウザイ!とか思ってましたし、彼女がやってきた行為は褒められたものではありません。
でも。
腕を潰され、顔を潰され、なお死に切れず蠢く彼女に、杭が打ち込まれる。
彼女の死に様は、残酷美をたたえつつ、一種荘厳な感銘を与えてくれました。

そして、地獄穴の底で、辰巳との決着をつけるために、ダイナマイト爆死を選んだ夏野。
問題の解決ではなく、血闘のカタルシスでもなく、矛盾を抱え込んだままの「無理心中」の趣がありました。
不条理さえも感じさせる死には、ゴダール監督『気狂いピエロ』の、主人公が唐突にダイナマイト自殺するラストシーンが重なり合いました。
そう、かつて感銘を受けた映像作品との二重写しが、心に触れたのかもしれませんね。それだけ構えの大きな作品でした。

「屍鬼」「人狼」という異類をテーマにして、存在の不条理性にまで迫ったアニメ作品『屍鬼』は、小野不由美さんの原作の力と相俟って、ずしりと重みの籠った力作だったと思います。

2010年の終わりと、来るべき2011年がすぐそこに。
年の終わりに、こういう最終回に出会えた幸運を言祝ぎたいと思います。

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コメント

アンケートのお願い

突然の書き込みで申し訳ありません。

ただいま、
アニメ調査室(仮)というブログで、
2010/10-12月期終了アニメアンケート
というものを行っています。

結果発表は、2011/2/5予定です。

もしよろしければ、
あなたのアニメ評価を教えてもらえませんか?

ご都合がつきましたらブログの方をご覧ください。

以上、
突然の書き込み失礼しました。

投稿: アニメ調査室(仮) | 2011年1月 2日 (日) 15時31分

感想を読んで、すごく綺麗な文章をお書きになるんだなと関心しました。素晴らしい文才と、そして何より屍鬼に対する愛情を持っていらっしゃることを感じ、ひとつ、この作品に対する解釈を伺いたいと思い、お尋ねします。この作者が作品を通して描きたかったものは何だと思われますか?

投稿: | 2011年1月 3日 (月) 15時15分

過褒なほどのコメント、ありがとうございます。何だか照れちゃいますねww
ご質問ですが、作者が、渾身の力で作品に込めたものを、一言二言で簡単に忖度するのは、実は不可能なのだと思っています。
でも、せっかくなので、簡単ですが、私の考えを書き出してみますね。
「生きるかなしみ」「神の沈黙」「永遠の闘争状態」「存在という不条理」などのキーワードが思い浮かびました。
屍鬼、という、人間の血を吸ってしか生きられない異類をきっかけにして、人と屍鬼との「闘争状態」を鋭く描破し、生と死、神の沈黙などの重くて重要なテーマを、問わず語りに浮かび上がらせる。
つまりは、作者が突きつけた「永遠の問題提起」ではないでしょうか?
矛盾を矛盾のままにして、ことさらな解決をつけない、という手法に、それが感じられます。
「神はいつも何も言わない。神の祝福と、生きること死ぬことは、関係がないんだ」
神の沈黙を、住職(聖職者)である室井の口から語らせたのにも、大きな意味が込められています。
ルールを振りかざす大川が、室井に殺される(否定される)という終劇は、もっと巨大な「自然界のルール」の存在を示唆している気がします。
そして、自ら滅しようとした沙子が室井によって救出される結末には、「喪失と再生」の可能性を感じました。
屍鬼も人も、矛盾に充ちた「生のかなしみ」を抱え込みながら、それでも「生きて」いかなければならない。
作者の、強いメッセージが感じられます。
こんなところかな。取り合えずのお答えにはなったでしょうか。

投稿: SIGERU | 2011年1月 4日 (火) 06時49分

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