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2010年6月 8日 (火)

閃光のナイトレイド第10話感想

#10「東は東」

葛が、高千穂勲を炎から救って逃走した!
律儀そのものだった葛が、仲間を裏切るとは…。驚愕の展開です。
1925年の過去回想で、陸軍士官学校予備門での石原莞爾の講演にインスパイアされた葛の姿が描かれていましたね。
これが伏線だったのか。
軍人は軍人、ということなんでしょうか。国を憂え、忠国を尽くすのが、軍人の本分という事なのか。
若いころに心酔した物からは、結局逃げられない、ということなんですね。

私とアニメが、そうでした。
小学生のころ、寝ても起きてもアニメとマンガだった私。ついに、見かねた親から、戒厳令を敷かれてしまいました。視聴禁止を喰らったのです。
中学生から高校生にかけて、完全なるアニメからの断絶。アニメ大暗黒時代でした。
もともと文学も好きだったので、渇を癒すために、詩や小説や評論のたぐいを、大量に読み散らしていました。
しかし。
大学生になって独り暮らしを始め、念願のテレビを購入。
たまたま放映されていた某有名ロボットアニメを、何の気なしに見たら。
はまったーーー!!!
依存症のフラッシュバックみたいな激烈さで、のめり込んでしまいました。
隔離期間が長かっただけに、それはそれは激しい妄執でした。
妄執が度を過ぎた結果、アニメ感想ブログまで開設してしまったほど…。

「そして、アニメの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。
 今でもまだ燃えています」
(宮澤賢治『よだかの星』より。ウソですww)

閑話休題。

高千穂勲が見せたのは、幻覚なのか、現実なのか?
想像の産物としては生々しすぎる。
市ノ瀬の「未来からの一言によって」が気になります。
「ターミネーター」のような、未来からのタイムリープも連想したのですが、ここはやはり、預言者の一言、と解釈すべきでしょうね。
葛が目撃したのは、ウラン濃縮施設。
現実の日本でも、原爆開発計画は、1940年代に始まっていました。
陸軍による二号計画(ウラン235の熱拡散による濃縮)。そして、海軍によるF計画(遠心分離による濃縮)。

石原莞爾の「最終戦論」にすごく興味をひかれましたが、たぶん多数のブロガーさんたちがコメントしていると思うので。
ここでは、勲が引用した、キプリングの「東は東」に食いついてみます。

ラドヤード・キプリング(1865-1936)は、英国の作家・詩人。
「ジャングル・ブック」は、私の、子どもの頃の愛読書でした。
狼に育てられた野性の少年、モーグリが、動物社会と人間社会のはざまで懊悩する物語。
どちらにも所属し切れないモーグリの苦悩に、当時、共感したのを覚えています。

高千穂勲の引用では、「東も西も国境も家系も育ちも血統もない」が強調されていて、まるで東西融和、人間平等起源論のような理想を具現化しているように聞こえたのですが。
原詩「東と西の物語」を確認したところ、そこまで壮大な内容は包含してないみたいです。
偉大な二人とは、盗賊カマールと、国境斥候隊の大佐の息子。
闘争を通じて、二人がついに理解し合うという内容の、叙事詩でした。
ナイトレイドでは、東と西の偉大な二人を、勲と葛に譬えていましたが。
どうやら、本来の詩の内容から、言葉が一人歩きしているらしい
そして、キプリング自身は、少年時代のインド体験による東への理解にもかかわらず、「白人の責務」という言葉にも見られるように、白人優位思想からついに脱することができなかったようです。
まあ、保守的なヴィクトリア朝の英国人として、無理もないのですが。

次回「闇の探索」

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