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2005年6月19日 (日)

遥の長い午後(SS)

「ふう」
でぼちんこと遥は、昼休みの学園内をうろうろしていた。いつもなら忠実につき従っている雪之の姿はない。設計事務所を経営している父親の手伝いで、やむを得ない用事があるとのことだった。

「雪之がいないと、身の置き場がない感じがする。あたくしって、こんな弱い人間だった…かな?」
気がつくと、生徒会室の前だった。
「何となく来てしまいましたわ」
恐る恐る覗く。やっぱりいた、しかも、何やら食事中だ。
「ぶぶ漬け生徒会長、お昼は何食べてるのかしら」
興味津々で、身を乗り出す遥。
ときおり、ずずっと啜りこむような音。それは紛れもなく……。
「うっそ~。昼からマジでぶぶ漬けえ?!」
静留がゆっくりと顔を上げた。
「珠洲城はんやないですか。何したはりますのん、そないな所で」
「え?い、いや別に」
「遠慮せんと、入んなはれ。それとも、うちが怖おすか?取って食いはしませんよって」
あのアルカイックな微笑を浮かべて、まるで誘っているようだ。後に引けなくなった遥は、わざと肩を怒らせて生徒会室にずんずん入っていった。
呼び入れたくせに、こちらを見もしないで食事を続ける静留。所在なさげに、静留の箸の動きをみつめる遥。
よほど物欲しそうな様子だったのだろうか。やっと、静留は気づいたようだ。
「お腹すいとるんちゃいますか。ぶぶ漬け、いかがどす?」

え、静留にお昼をよばれた?彼女は耳を疑った。
これまで、どう挑発しても、どう突っ込んでも、まったく相手にされない日々が続いていた。執行部長としての自信もぐらつき気味で、このひとには一生かなわない、歯牙にもかけてもらえないと、半ば諦めかけていた。
それなのに、突然のお誘い?
よく考えれば大したことでもないのだが、でぼちんの妄想力によって、完璧な脳内変換シミュレーションが瞬時に完成していた。
ぶぶ漬け食べはります?→ついでにうちも食べはります?(笑)
そのまま――
珠洲城OS起動!
藤乃静留のコールを確認!モード・エマージェンシー、全拘束式を解除!アンチなつきライザーエントリー!モード、イエローグリーン!!(おいおいおい)
そのまま、天空まで舞い上がりかけた。思わず、即答しようとして。
「食べ――」
はっと、我に返った。
『待てよ、これが噂のキョウトトラップ?ぶぶ漬けを勧められて、遠慮もせずにハイなんて言おうものなら、一生アホの子扱いされ、累は子孫三代に及ぶというアレなのね?ひ、ひっかかるもんですか』
「い、いえ、遠慮しておくわ」
「そうどすか」
残念そうな静留。遥は、はやる気持ちを必死に抑えながら、自分に言い聞かせていた。
『つかみはオッケーですわ。この後、2回勧められたら、それではいただきます、と言えばいいんですわね。そのときこそ……』
「静留いるか、静留?」
なつきが、風を巻くようにして飛び込んできた。
「相変わらず、いきなりどすなあ。なつき」
「それどころじゃない、大変なことになったんだ」
「どうしたんどす」
「昼に食べるものがない。わたしはお昼を抜くと死んでしまう体なんだ」
「お昼って――。うちが作ってあげた愛人(?)弁当はどないしやはったん」
「あんなの……とっくに早弁しちまった……」
「しょうがおへんなあ、なつきは。このぶぶ漬けでも、あがります?」
「いいのか?」
すぐに飛びつくなつき。
『ふふふ、来た来た来た、トラップキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!!(笑)』
遥は黒い笑いを隠しきれなかった。
『これで、玖我さんと藤乃さんの甘い仲もおしまいですわ。強化人間、もとい京都人間完全体の彼女が、これを許すはずないもんね~♪』
なつきの没落がどうしてこんなに嬉しいのか、実は遥自身にも分っていなかった。
ただ、甘やかな期待が体の中に満ちてくる。下半身がとろけそうになる感じ。思わず身悶えを抑えかねる遥だった。
ところが。
「サンキュー、静留。……うん、なかなかいけるぞ、このお茶漬け」
がつがつ啜りこむなつきを、愛しそうにみつめる静留。
「そうどすやろ?玉露と特製ツユをかけ回してあるよって、そこらのぶぶ漬けとはモノが違いますえ」

ガ━━(゚д゚;)━━ン!!

(_△_;ガァーーーン!!

ガク ━━━━ ||||||(。_ _)||||||━━━━ リ !!

………………………………………………………………

夕暮れ。
長い影を引きずりながら、学園内をとぼとぼ歩くでぼちんの姿が。
「遥ちゃん、遥ちゃんじゃないの?」
駆け寄ってきたのは、雪之だった。用事が早く終わったらしい。
「ど、どうしたの、遥ちゃん。顔色悪いよ」
「雪之……、悪いけど、いまあたくしに話しかけないで」
肩を落として歩き去っていく遥の後姿を見送りながら、雪之はさみしそうだった。
『あたしじゃダメなの、遥ちゃん――。ううん、そんなことない。遥ちゃんの心の中にいる人のことは知ってる。でも、私たちには、いっしょにいた長い時間があるはず。それは、誰にも負けないわ』
雪之は、必死で声をはげました

「待ってー、遥ちゃーん!」

(一応おしまい)

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コメント

おお、ぶぶ漬にキョウトトラップですか。静留に対する深いこだわりと愛着を感じますねー。
静留さんネタはちょっとピ~な展開になりそうなんで私は自粛しますんで(^^; きばっとくれやす。(^^;(^^;

やっぱり雪之はオシが足りない??


投稿: としさん | 2005年6月23日 (木) 00時25分

としさん、おこしやす~。
>静留に対する深いこだわりと愛着
おおきに、嬉しおすわあ、分ってくれはって。←何者ですかあなたは。(笑)

京都弁のちょっとヘンだったところと、一部誤植をさりげなく?訂正しました。ついでに、深優・グリーアネタを新たに挿入。しかし、アンチなつきライザーって何なんでしょうね、自分で書いててよう分らん。(爆)

ピ~な展開、いいですね~。世間様では、静留となつきの思いっきりピ~が大流行のようですよ。ここは一番、としさんが人肌いやさひとはだ脱いでみては!(///∇///)

投稿: SIGERU | 2005年6月23日 (木) 23時30分

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